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北野映画と引き算

今度、父親と子どもを題材にした小説を書こうと思い、近頃その手の作品を見たり読んだりしている。松本大洋の『花男』や角田光代の『キッドナップ・ツアー』、北野武の『菊次郎の夏』など。

僕は元々、北野映画が大好きだ。『菊次郎の夏』ぐらいまではほとんどが名作だと思う(『あの夏、いちばん静かな海。』だけはよく分からなかったが)。

Kiku

『菊次郎の夏』を初めて見たのは七、八年前だ。見終わった後、なぜか涙が止まらなかったのを覚えている。特に細川ふみえとその彼氏が関口雄介演じる正男と戯れるシーンが好きだ。

二人の周りをグルグルと回る正男。久石譲の音楽が流れる。ほのぼのしていて良いシーンだ。思わず微笑んでしまう。そしてカメラが引いていくと“立入禁止”の看板が……。お笑い芸人だけあって、脱臼のさせ方が上手い。

この映画を見たのは恐らく今回で四回目になるのだが、見る度に発見がある。よく北野映画は引き算を駆使していると言われるのだが、なるほどなと思った。

まず台詞が少ないし説明的なシーンもあまり無い。無駄を削いで削いで、極限まで引き算をしようとしているように見える。

小説でいうとハードボイルドの文体がそうだ。ハードボイルドは接続語を抜いて短い文体を重ねる。無駄を省き、簡潔な言葉で言い表す。それを映画でやっているような感じだ。

『菊次郎の夏』で言うならば、夜店のシーンが分かりやすい。たけし演じる菊次郎が、むちゃくちゃをしすぎて、その筋の人が出てきてしまう。彼らと対峙する菊次郎。

次のシーンでは、菊次郎の鼻から血が流れ出ている。「子供がいるんだ、やめてくれよ」と菊次郎。

そしてまたシーンが変わる。俯せで土の上に倒れている菊次郎。ヤクザが菊次郎を殴ったという描写は完全に省略されている。

また正男もあまり言葉を発しない。黙ったままのバストアップがたっぷりの間で撮られている。それを見ている観客は、どういう気持ちでいるのだろうと考えさせられる。端折られた分を見る側の想像で補っているのだ。

そう言えば北野武は、小学校時代に算数が大変、得意だったそうだ。

かく言う僕はというと、クラスで二番目に百マス計算が遅くて、そろばん塾に通う羽目になった。

サインやコサインなんて、単語を耳にするだけで「いやん」ってなる。

それぐらい苦手だという事だ。

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