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『ちびまる子ちゃん』 さくらももこ

さくらももこは意地悪である。意地悪だから笑いが作れる。

ご存知の通りいまや『ちびまる子ちゃん』は国民的マンガ・アニメとなった。りぼんの通巻最高発行部数を誇る。

日曜日には、ちびまる子ちゃんの後にサザエさんが放送されている。両方とも万人に受け入れられているのは間違いない。

だが、この2つは大きな違いがある。ちびまる子ちゃんの方はリアルで実にシニカルだ。

色々な所で指摘されているのが、ちびまる子の子供世界には、確固たるヒエラルキーが存在している。大野君や杉山君が最上位で、そして花輪君、丸尾君、はまじ、ブー太郎、永沢、山根、藤木、山田と言った感じの序列になるだろうか。

上位の者は君付けで藤木や山田はまる子も呼び捨てにする。こういうところがシビアで良い。

さくらももこは、男性優位と言われているギャグ漫画の分野で、勝負できる数少ない女性マンガ家なのだ。ギャグ漫画を描けると言う事は、客観視できるという事である。だから必然的にシニカルな視点を持つようになるわけだ。

エッセイなどにも書いているが、さくらももこ自身、幼少の頃から非常に醒めたガキだったそうだ。確か松本人志も自身の子ども時代を振り返って同じような事を言っていたはずである。

Tibimaruko_2 一巻で『まるちゃん遠足の準備が好き』の2ページ目に登場する洟垂れの男の子の周りには何とハエが2匹飛んでいる。愚鈍な者に対する嫌悪感めいたものすら感じられる。

この話の続きが大分先の5巻にあるのだが、まる子の横に座る例のハエのたかっていた男の子が、バスの中のしりとりをする際に、いきなり末尾に『ん』のつく言葉を口にしてしまう。

バカは徹底的にバカとし描かれている(もちろんそれが作品を面白くもしている)。

この遠足で登山へ行ったまる子が山頂で、たまちゃんたちと楽しそうに食事をする横では、友達のいない男子が一人暗い顔をして心霊写真を眺めている。その男子のコマにはきっちりモノローグで、『彼には友人がいないのだ』とまで書かれている。普通、ほのぼのしたマンガではこういうシーンはあまりない。

言い換えればさくらももこが本質的な意味でギャク漫画家という事の証明になるのかもしれない。

ちびまる子ちゃんは5巻までが凄く面白い。その後の巻ではどちらかというと人情話へとシフトチェンジしてしまった(野口さんは大好きだけど)。
 

ちなみに僕は『サザエさん』をユーモアマンガだと解釈している。あれはギャグではない。ギャグにはもっと毒が必要だ。

『意地悪ばあさん』はどちらかと言ったらギャグ漫画に近い。作者の長谷川町子自身は、『意地悪ばあさん』の方が好きだったそうだ。

『サザエさん』は大衆向けの作品なので、結構無理をしていたのかもしれない。

さくらももこの意地悪さ満開の漫画をもっと読んで見たい。心からそう思う。

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