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『14階段』 窪田順生

09389702 藩金蓮さんのブログの、この記事を読んだあと、久しぶりにドキュメンタリーを読みたくなって、図書館で『14階段』を借りてきた。

拉致事件としては、あまりに有名な『新潟少女九年二ヶ月監禁事件』のルポルタージュである。

普段、小説を好んで読んでいる僕からすると、あまりの救いのなさに顔を顰めながらも、最後までページをめくる手が止まらなかった。

著者の窪田順生は、監禁犯の佐藤宣行の母と次第に親密になり、いろいろなことを聞き出していく。客観的というよりは、多分に主観的、感情的な本だが、逆にそこがこの本を面白くしていると思う。

読後にすぐに思ったのが“やさしさ”について。確かゴーマニズム宣言にこう書かれていた。

『本当のやさしさは、その内側に厳しさを含んでいる』と。

佐藤は両親に溺愛されて育った。何をしても怒られなかった。溺愛とはある種の虐待であると僕は思う。社会に出てから困るのは、他でもない甘やかされて育った子どもなのだから。

佐藤が生まれたとき、彼の父親は62歳で、同級生から見ると

「おじいちゃんみたい」

そう言われるほど、年を取っていた。この父親は、何があろうと息子を怒らなかった。佐藤に罵られ、丸めた新聞紙で頭を叩かれても。

そして36歳と高齢で佐藤を出産した母親も、甘やかし続けた。保険の外交員として優秀だった彼女は、佐藤が欲しいというものを何でも買い与えた。

それは、佐藤が引きこもりを始めてからも続き、やがて佐藤の欲しがるアイドルのCDや雑誌を買いに行かされるまでに発展する。

その接し方を見ていると、佐藤の両親は、息子の事を考えていないし、あまりに無責任で、本当の意味でのやさしさを持っていなかったと僕は思う。

間違っているなと思ったら、時には暴力を振るってでも、息子に教育をすべきなのではなかっただろうか。

佐藤が一度両親に

「親なんだからなにかあったら、かかって来い。親なんだから気をつかうな。堂々とした態度で叱ってくれ」

と訴えたという記述からも、佐藤自身が叱ってくれる事を望んでいたのは明白だ。

ちなみにタイトルの『14階段』とは、少女が監禁されていた家の階段の数の名前である。息子が逮捕された後、筆者たちと一緒に酸素呼吸器をつけ老いた母親が、踏みしめるように、上がっていく姿が印象的だ。

20年間、息子か一歩も上がることを許されなかった、14階段を。

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コメント

あの事件を元に、桐野夏生が「残虐記」を書いてて、鼠先輩のプロデューサー松嶋クロス監督が「さっちゃん」というAVを撮ってますが、AVは未見です。
「14階段」も未読です。
私はあの事件は、少女の「逃げ出せない恐怖」がひとごとだと思えなくて怖かったです。読みます。

投稿: 藩金蓮 | 2009年3月15日 (日) 22時37分

残虐記は、新潟の事件がモデルだとは知らずに読んでました。「さっちゃん」の方も気になりますね。

逃げ出せる機会はあるのに、逃げ出せなくなるというのは、安部公房の『砂の女』なんかもそうですよね。あれは軟禁されるのが、女性ではなく男性という珍しい作品ではありました。

『14階段』はお勧めですので、ぜひお読み下さい。

投稿: 管理人 | 2009年3月15日 (日) 22時57分

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