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2009年3月

一分映画、こぼれ話

先週の金曜日、塾で一分映画の撮影をした。詳しくは更新されている作激塾ブログをお読みいただくとして、ここから先はこぼれ話。

一本目の撮影が終わり、みんなは次の準備に取り掛かる。尿意を我慢していた僕がトイレへ行き戻ってくると、監督青谷圭の指示で、出演者である小波くろがメイクをしていた。

用意が整い、少し休憩という時。おもむろに小波が立ち上がった。何だろうと思っていると、ツカツカとBOMちゃんに歩み寄り、何か話し始めた。

僕の角度からは、小波の背中とBOMちゃんの顔が確認できる。その表情は明らかに怯えている。

無言で何度も頷いた後、突然、靴を脱ぎだすBOMちゃん。

BOMちゃんの靴を履く小波。

どうしたんだ。一体なにがあった? 一気に不安に包まれる僕。

BOMちゃんの怖がり方は尋常じゃない。

その時、小波がこちらを振り向いた。

「ヒイィィィィ!」

思わず悲鳴を上げそうになった。

青谷監督にダーク系メイクを施された小波くろは、すんごく怖かった。左目の眼帯も、その怪しさに拍車を掛けている。

僕の方へゆっくりと近づいてくる小波。不気味だ。近づくほど、その怖さは増していく。

まるで、その様はテレビから出てきた貞子のようだ。

「どうしよう……。僕もBOMちゃんのように、靴を奪い取られるのだろうか。だけどなぜそんなに靴にこだわるのだ。このまま塾生、全員の靴を奪い取るつもりか? そんなハレンチな事をして、なにが嬉しいんだ。もしかして、靴フェチか? 靴を強奪された僕は、どうやって家に帰ればいいんだ。旧暦では春だけど、まだまだ外は寒いんだぜ。堪忍してくれ、金やるし。春はあけぼの、やうやう白くなりゆく山ぎは……」

まとまりのない思考が脳内を駆け巡る。恐らく僕の顔色も、だんだんと白くなっていってたはずだ。

もし清少納言がその様子見ていたら、恐怖のあまり、裸足で逃げ出していただろう。

じいっと黙って僕の顔を見ていた小波が、ついに口を開いた。

「……貸してよ」

何と言ったのか分からない。やはり靴が目的か? でもサイズは合わないぞ!

「……ぎ、貸してよ」

まだ聞き取れない。今思うと、それほど僕はびびっていたのだろう。

「だから、自転車の鍵貸してってば!」

「は、はい」

訳も分からず、鍵を差し出す僕。

小学生の頃、近所の不良に公園でカツアゲされた、嫌な思い出が一瞬、脳裏をよぎる。

BOMちゃんシューズで、小走りに外へと出て行く小波。

靴を取られないで良かった、そう思うと体の力が抜けた。

撮影後、話を聞くと、青谷監督に赤のマニキュアを塗って映画に出て欲しいと言われたのだが、持参したマニキュアを途中で使い果たしてしまったため、心斎橋まで買いに出かけたらしい。

それにしても、いくら急いでいたからと言って、眼帯をつけたまま買い物に行く事ないだろうに。

店員さんも恐怖のあまり

「お代は結構です」

と言いかねない。

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※小波の「ねえ、誰か靴貸してよ」に対し「いやあ、勘弁して下さいよ」と言いながらも、あまりの恐怖に笑ってしまう一同。

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親父の寝顔

母に頼まれ、いやいや父の寝室に向かった

父の寝起きが悪いのは今始まった事ではない

無傷でいられるだろうか

嫌な予感を覚えながら、ドアノブを回す

部屋に入るのは何年ぶりだろう

小学校の頃に入ったのが最後だった気がする

ゆっくりと足を踏み出す

スー、スーという寝息が聞こえてきた

右手を伸ばし壁のスイッチに触れると

室内が明るくなった

布団をめくると

女子高生の格好をしたまま寝入る、親父の姿があった

相も変わらない、倒錯的な趣味

目をそむけたくなる

と言いたいところだが、なぜか俺はひきつけられた

親父の寝顔を見て

「なかなか、かわいいじゃないか……」

不覚にもそんな事を思ってしまった

胸のドキドキが止まらない

どうやら俺は親父に惚れてしまったらしい

たくましいその肩に触れ、優しく親父を起こした俺は

耳元でそっと呟いた

「付き合って下さい」

すぐさま拳が飛んできた

鼻骨の折れる音がした後、激烈な痛みを覚えた

だが俺の気持ちは変わらなかった

いやむしろ先ほどよりも燃え上がっていた

すぐに上手くいかなくてもいい

密かに心に誓った

いつか親父の首を縦に振らせてみせると

俺は鼻血を拭いながら、窓の向こうに目をやった

一羽のツバメが軽やかに飛んでいた

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先手必勝!

ああ、やっと来よったで

赤ずきんのやつ、遅いねん

ほんまにどんだけ待たせたら

気が済むねんな

こっちは餓死しそうなくらい

腹へっとんねん

あれが赤ずきんか……

うーわ、めっちゃブサイクやん

鼻、上向いてるやん

うーわ、引くわ~

ああいうルックス引いてまうわ

なんやねん

腹立つわ

三日待って

やっとやって来たんがブサイクって

しかもな

しかもやで

狼である俺よりも

あいつの方が口でかいってどういう事?

耳まで裂けてるがな

あっしまった

目ぇおおてもた

うーわ、ぐいぐいこっち来てるし

なんやねん

やめろや

耳引っ張んなや

痛いやんけ

耳急所やねん

いや、僕ちゃいますよ

ブサイクとか言うてないっすよ

ちょ、部活あるんで離して下さいよ

遅れたら先輩にどやされるんですよ

縦社会なんですよ

赤ずきん

赤ずきんさん

お願いします

離して下さい

耳、痛いです

頼みます

めっちゃ耳痛いんです

離して下さい

赤ずきんさん

耳ギュウッってやらんといて下さい

ほんまに痛いんです

赤ずきんさん?

はー、やっと離してくれたがな

よっしゃ、あいつ向こう行ったなあ

と思ったら

すごい勢いでこっち戻ってきやがった

うーわ、あいつ猟銃持っとるやん

撃つなあ!

あっぶなあ

あと一センチずれたらアウトやで

誰や赤ずきんに銃、渡したんわ

逮捕せい、逮捕

なんや香ばしい匂いがすると思ったら

毛ぇ焦げてもうとるがな

あれっ、反対側からばあさん出てきたで

なんでお前も銃持ってるねん

挟み撃ちかいな

あ、あかん

腹打たれてもうたなあ

完全に貫通してるし……

油断したわ

まさか食べる前にやられるとは

思わんかったね

先手必勝とはこの事やで

でもこれだけは言うとくぞ

肉食動物の肉は硬くてまずい

ああ、こんだけ言うても食べるんやね

うーわ、知らん間に、皮、裂かれてるし

お前らはあれか?
食いしん坊か?
頷いてどうすんねん

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『作劇的人々』更新情報!

『作劇的人々』の第四回をアップいたしました!

ゲストは、島奈世子さんです。

よろしくお願いいたします。

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人生最大の目標(創作物)

ああ、今日ええ天気やなあ

お日さんがよう照ってるわ

あれっ誰かこっち向かって来てる

あれはもしや……

うーわ、まだひ孫遊びに来てるやん

だるいわ、あいつ

なんでそんな頻繁に遊びに来んねん

わし九十八やで

キャッチボールとかできひんちゅうねん

実の親に遊んでもらえ

共働きとか言い訳にならんぞ

こっちは命かかっとんねん

もう毎日のように孫とかひ孫とか、知らんおっさんが

家、来るから嫌になるわ

このまま行くとわしの最大の目標である

百歳超えがでけへんようなるかもしれんな

そうなる前に手ぇ打たな

どうしよかな

居留守使おっか

せやな、それしかないわな

よし、今日は居留守作戦で行こう

うーわ、ひ孫のやつ窓から勝手に入って来てるやん

ベル鳴らせよ、付いてんねんから

えっなんやてDSしたい?

嫌じゃ、そんなもん

わし近くのもん見えへんの知ってるやろ!

あーあ、泣き出しよったで

ほんまに面倒くさいなあ

うーわ、窓から知らんおっさん入ってきてるし

もうほんまに面倒くさいわ

警察に電話するのも面倒くさい

しかも手に包丁持ってるやん

こりゃ、ひ孫を盾に戦うしかないなあ

うーわ、ひ孫おらへんやん

いつの間にか逃げ出してるやん、面倒くさー

生きるのってほんまに面倒くさいわ

面倒くさい事だらけやね

せやけど、よう、この年まで生きてきたと思うわ

自分で自分を褒めてやりたいですよ

クソッ、ええ事言うてるのに

誰も聞いてへんし

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ファーストインパクト

昨日、有栖川有栖創作塾の第七期、二回目の授業があった。

授業前に、少し有栖川先生とお話させていただいている時に、僕が持ち込みをしている編集者の方(Eさん)の話題になった。

僕は今まで二回、小説の持ち込みをしているのだが、二度ともEさんに読んでいただいている。

有栖川先生のご好意で、お食事の席にご一緒させていただき、その時にEさんと、お話をさせていただいたのがきっかけだ。

さっき、ふとある事を思い出した。

実はその会食の後、あるバーへ行き、そこで僕はEさんにある短編小説を読んで下さいと、お渡しした。

そのタイトルを見た後、数秒の間、Eさんは「これ、すごいね」と言いながら、爆笑されていた。

僕が手渡した小説のタイトル

『オナニスト一号』

である。

引きこもり青年が、文字通りする自慰行為をしていき、やがてはある特殊技能を生かして、戦場で戦うようになるという、かなり馬鹿げた話である。

今から思えば、よくこんな作品を渡したなと思う。

にもかかわらず、未だに東京へ行くと、作品を読んで下さるEさんの寛大さに脱帽である。

まあ、インパクトだけはあったかなと思うが。

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桃から生まれて、すいません

じいさん

じいさんや

ちょっと来てくれへんかいな

あのなあ

今日なあ

川で洗濯してたらなあ

でっかい桃が流れてきたんやんかあ

私、腰痛持ちやから

家まで持ってくんの大変やったけど

まあ何とか運んできたわけよ

ほんでさっきナタで割ったらやなあ

あんまり切れ味良すぎて

赤ん坊が真っ二つ

せやけどそっからがすごいがな

時間とともに

欠けていた方の半身ができてきてやな

二人に増えたんやがな

更に倍にしたろ思てな

また左右に真っ二つにしたんや、二人とも

ほんならまた再生しよったがな

四人になったわ

今度、八人にするから見ときや

こうやって固定してやな

上からナタを振り下ろす

振り下ろす

振り下ろす

振り下ろす!

上手いもんやろ?

時間とともに再生してやな

時間とともに……

時間と……

時間……

じか……

じ……

うーわ、もうなんなん

なんで爺さん見てたら再生せえへんの?

恥ずかしがりなや

さっきみたいに再生したらええがな

このままやったら私が殺人鬼と思われるやんか

ただでさえ最近、近所でヤマンバとか言うあだ名がつけられてるのにやな

ちょっと爺さん、どこ行くの?

もうちょっと時間をちょうだいな

あと少ししたら再生するから

えっ酒買いにいくの?

ほんなら行っといで

多分、爺さん見てると

この子ら恥ずかしがって再生しよらへん

はい、行ってらっしゃい

よっしゃ、邪魔者は消えたで

はい、再生!

恥ずかしがりなや

見てんの私だけやがな

再生スタート!

はーあ、全然あかんやん

ピクリとも動かへんやん

しゃあないなあ

この子ら明日の晩のおかずにでも

するしかないかあ

はあ、残念やなあ

あと三回はいける思たのになあ

これっジョンッ!

つまみぐいしな

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ネット広告

ネットをしていると、よく画面の上や端に広告が出ている。

つい、さきほどの事である。

調べ物をしていたら、ある広告に目が留まった。

それは、鼻の毛穴の黒ずみをとるというクリーム。

左側に鼻の黒ずみのアップ、その右に毛穴が目立たない女性の写真。

どちらも同じ女の人である。

問題は左側の方の写真。

この黒ずみは、CGなのだろうか?

それとも「広告の写真に使うんで、ちょっとしばらく鼻の辺り、洗わずに放置しといてよ。ミホちゃん(仮名)」とでも頼まれたのだろうか。

謎は深まるばかりである。

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新たな野望

昨日、風呂に入っていた時のことである。

湯船に浸かる前、鏡を見たら、胸の辺りに短い毛が付いていた。

手で払おうとしても、毛は胸に乗っかったまんま。

おかしいなと思い、指でつまむと軽く痛みが走った。

僕はようやく、それが胸毛であることに気づいた。

今まで一本も生えていなかったので、不思議な感じだった。

こうなりゃ、打倒、西條秀樹。

ギャランドゥー!

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AV探索紀行

昨夜、藩金蓮さんを連れ立って、日本橋の某AVショップへ行ってきた。

そこはAV店に限れば、恐らく日本橋で最大級の規模を誇る。

東京の人にが知っているぐらい有名で、藩さんから機会があれば連れて行って欲しいと前から頼まれていた。

目的の店が近づくにつれ、見る見る笑顔になっていく藩さんを見て、やはり根っからAVが好きだと再確認。

藩さんに言わせると、その店は宝の山が埋もれているらしい。だが年間300日以上そこへ通っている僕としては、どちらかと言えばルーチンワークに近い。

その店は1Fが一般作、2Fが新品のAV、3Fが中古のAV。そのように分かれている。藩さんの目的は、宝の眠る3F。

目的地に到着した藩さんは、いささか興奮気味でスタスタと3Fへ歩いていかれた。

3Fの階段を上りきった藩さんは、くるりと僕の方を振り向き

「ちょっとワタクシ、VHSの方を見て参ります」

そう言い残し、ビデオコーナーへまっしぐら。その足取りは、競歩の選手の数倍、早かった。

宝探しの邪魔をしては、いけないと思った僕は、しばらく入り口付近のモニターで流れている『SM講座その1、女性の縛り方』というビデオを見ながら、「ほー、こんな世界があるのか」とひとり感動していた。

SM講座を見終わった僕は、中古DVDコーナーへ移動する事にした。

前にブログでも書いたが、僕はネットでオークションでAVなどを出品し、小遣い稼ぎをしている。だから、こんなにも足繁く日本橋に通っているのだ。

売れそうな作品をチョイスしながら、携帯のメモ帳に書くという作業を小一時間ほどしただろうか。僕も割りとそのモードになると、集中する方なので、藩さんの事をすっかり忘れていた。

ちょっと、様子を見に行こうかと、VHSコーナーへ移動した。

しかし、藩さんの姿が見当たらない。

そう言えば、前に藩さんのブログを読んでいると、AVコーナーにひとりで行ったら、変な男に声を掛けられたという話が載っていた。

「もしや彼女の身に何かあったのでは……」

途端に不安が胸をよぎる。

女性の方はご存知ないだろうが、AVを選んでいる男たちは猛獣だ。飢えた獣のように目をぎらつかせ、殺気を放ちまくっている。

どんなに温和な人間でも、その時だけは人格が変わるのだ。

思い出して欲しい。食事中の犬に、ちょっかいを出して『ガルルルル!』と吠えられた経験は、誰しもお持ちだろう。

そういう状況なのだ。

そんな所に女性がひとり迷い込んできたら、何があってもおかしくない。ガルル、ガルルルル。

真夜中のスラム街を、一糸まとわぬ姿で、ゆっくりと103周するぐらいの危険性はある。

僕の額に浮かんだ粘っこい大量の汗が、ポタリポタリと床に落下していった。

「もしかしてまた変な男に声を掛けられたのかも……」

早足で店内を探し回る僕。

「某国の工作員に拉致されたのでは?」

口にタオルを詰め込まれ、運び出される藩さんの姿が脳裏に浮かぶ。

「藩さーん。どこにいるんですかあああ」

もう少しで叫びだしそうだった。全身から噴き出した汗は、一向に止まる気配がない。

と……、VHSコーナーの一番奥の隅っこに人影があった。

視力の弱い僕が精一杯、目を凝らすと、輪郭が徐々にくっきりとしていく。

藩さんであった。それは、まぎれなく藩金蓮さんであった。

誰も到達した事のない、こんな奥地まで来ていたとは……。

ほっと胸をなでおろし、藩さんに近づく僕。

「新大陸発見、おめでとうございます!」

声を掛けようと思ったのだが、それはできなかった。

そこにはまぎれもない“一匹の鬼”がいた。

鬼気迫る形相で、VHSの棚の前に屈みこむ、藩さんを見て僕は思った。

『話しかけたら殺される』

動物的な本能で僕は悟った。

僕は割と第六感が優れている。それだけで生き延びてきたと言っても、過言ではない。

もし、この時、藩さんに語りかけていたら、今頃、ブログを書いていないだろう。運が良くて病院送り、下手をすれば火葬場で骨と煙に化していたはずだ。

何度も言うが、AVを探している人間は獣なのだ。邪魔をすると、命の危険にさらされてしまう。彼らは野獣。ナイフみたいに尖っては、触るものみな傷つけるのだ。

もしあなたが、今後の人生でそのような状況に巻き込まれた被害にあっても、決して恨まないで欲しい。むしろ不用意に近づいた己の愚を、後悔していただきたい。

話を戻そう。

依然AV探しに夢中の藩さん。

傍らに立ち尽くす僕には、まるで気づかない。

無言でAVを見つめる藩さん。そしてそれを見つめる僕。

この構図は数分間続いた。

「どうしよう。ここは一旦、引き返して、少ししてから戻ってくるべきか。それとも勇気ある決断をすべきなのか」

などと、思案していたその時である。

ふいに音楽が流れ始めた。

『蛍の光』だった。

続いてアナウンスが流れる。

『本日は当店にご来店いただきまして、まことにありがとうございます。あと10分ほどで……』

そうか。もうこんな時間だったのか。

僕が右手で額の汗を拭うと、藩さんがこちらを見上げていた。

「あら、高田さん。いつからそこにいらしたの?」

「い、今来たところです」

なぜか嘘をついてしまう、気の弱い僕。

いつもの温和な表情に戻っている藩さんを見て、僕は胸を撫で下ろした。

“淑女、藩金蓮”の帰還であった。

思わず心の中で「藩さん、おかえりなさい」と呟いた。

「あら、もうこんな時間ですの。残念だわ」

そう言って立ち上がった藩さんの足元には、買い物籠が置いてあった。

中を確認すると、凄い量のVHSが積まれている。

「こんなに買うんですか!」と驚く僕をちらりと見て、藩さんは言った。

「あらあなた、何をおっしゃてるの? こんなのまだ序の口ですわよ。フフフ……」

微笑みながら、買い物籠をレジへ運ぶ藩さん。その後姿は少年時代に風呂場で目にした、父の背中のようだった。

藩さんの背中は、僕にこう語りかけた。

「甘いな小僧。出直してこい」

トボトボと情けない足取りで、藩さんの後ろを歩く僕の頭上では、相も変わらず『蛍の光』が流れ続けていた。

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『作劇的人々』情報

『作劇的人々』の第三回分をアップ致しましたので、ご覧下さい。

ゲストはモコピーこと小西正樹君です。

よろしくお願い致します。

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ただいま親父、通勤中

ああ、久しぶりに早く家出たなあ

やっぱり、ええなあ

こうやってゆっくり登校できんのって

遅刻寸前ばっかりやったもんなあ

ちょっとバタバタしすぎてたなあ

よしっ決めた

これからは、早めに起きて学校へ行こう

あれっ、向こう側の道路歩いてんのって親父やんなあ

へー、この道から駅まで行ってたんや

知らんかったわ

あっ今、足くじいたよなあ

うーわ、めっちゃキョロキョロしてるやん

また、歩き出した

さも何もなかったかのような顔しとるなあ

でも完全にばれてるやん

思いっきりくじいたやん

ここまでグキッて音がしそうなくらいの

ぐねり方やったで

ほらほら、歩き方おかしいやん

明らかに左足、負傷してますやん

無理すなよ

そんなにすぐに歩き出さんでええがな

しかし、顔からえらい脂汗出とるなあ

相当、痛いんかなあ

あっ止まった

親父止まった

ちょっと休憩すんのかなあ

あっあっ地面に倒れこんだがな

どないしてん

両手を地面につけてなんか呟いてるなあ

あーあ、とうとう泣き出しよったで

やめてくれよ、格好の悪い

同級生に見られたらどうすんねんなあ

地面を拳で叩くなよ

足ぐねったんがそんなに悔しいんかいな

うーわ、もう号泣やん

人目もはばからず泣きじゃくってるやん

家ではあんなに威張ってるのになあ

やっぱり虚勢やったんか

よっしゃ、ええ機会やから

こっそり写メ撮っとこ

ほんでなんかあったら

これ見せておどしたろ

にひひひひ

パシャリと……

あー、ええ写真撮れた

両手で地面を叩きながら泣き叫んでるところが撮れたで

しかし、これ人に見せたら

この人の身に何があったんですか?って絶対聞かれるやろうなあ

まさか、足くじいただけとは夢にも思わんやろうな

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スカトロジーと松嶋尚美

スカトロジーという言葉をご存知だろうか? 糞尿嗜好や糞尿に関する笑い、まあ糞尿ネタを指して言う。

僕の大好きなギャグ漫画でもスカトロジーネタはよく見かける。ざっと例を挙げると、とりいかずよしの『トイレット博士』、小林よしのりの『おぼっちゃまくん』、榎本俊二の『えの素』、最も知られているのは、鳥山明の『Dr.スランプ』ではないかと思う。

ウンコをもてあそぶアラレちゃんの姿は、あまりに有名で、涙なくしては見られない。

スカトロジーギャグというのは男の小児性の現れだと思う。上記の漫画家もすべて男性である。

しかし唯一の例外がいる。“白い悪魔”こと、オセロの松嶋尚美だ。彼女は筋金入りのスカトロジストだ。

僕は、『きらきらアフロ』が好きで毎週欠かさず見ているのだが、まあよくそっち系の話になる。

一度、松嶋尚美が短期間、『KILLERS』というバンドを組んでライブを行ったときの事、彼女は大観衆を前に興奮しすぎて、失禁してしまったと、嬉しそうに語っていた。

僕も別にその手の話は嫌いではないのでいいのだが、問題は食事中である。僕は家で食事をする時、必ずと言っていいほどテレビをつけている。

録画しておいたテレビ番組を見ながら、食べているのだが、松嶋尚美が出てくると、いや~な予感がする。そしてその予感は、必ずと言っていいほど的中する。

彼女は小学生男子よりも、スカトロジーが好きだ。ああいう女性は珍しいと思う。

昨日の事である。

僕は前日に録画しておいた『人志松本のゆるせない話4』を見ながら、食事を取っていた。参加メンバーの中に松嶋尚美がいた。

ちょっとやばいかなと思いつつも、食事を続けた。

ここでそんな話をしないだろうと、僕は高をくくっていた。

甘かった。

松嶋尚美の選んだ話題は『トイレの便座』。

食事中の方がいるといけないので、詳しくは説明しない。だが飯がとてもまずくなった、という事だけお伝えしよう。

まさに“白い悪魔”の面目躍如である。

松嶋尚美、恐るべし。

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ただいま片二重

生まれてからずっと一重まぶだで暮らしてきたのだが、なぜだかここ一週間ほど、右目だけが二重になったまま戻らない。

片二重というやつだ。

疲労でまぶたがむくんでくると、二重になる人は結構いるようだ。

ちなみに二重の人は、三重(みえけんじゃないよ)、四重になるらしい。

鏡で自分の顔を見ると、非常にバランスが悪い。

左目が二重になるか、右目が元に戻るか、どちらでもいいから

次の展開に進んで欲しい。

なんだか気持ちが悪くて仕方がない。

僕はシンメトリーが好きなのだ。

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『14階段』 窪田順生

09389702 藩金蓮さんのブログの、この記事を読んだあと、久しぶりにドキュメンタリーを読みたくなって、図書館で『14階段』を借りてきた。

拉致事件としては、あまりに有名な『新潟少女九年二ヶ月監禁事件』のルポルタージュである。

普段、小説を好んで読んでいる僕からすると、あまりの救いのなさに顔を顰めながらも、最後までページをめくる手が止まらなかった。

著者の窪田順生は、監禁犯の佐藤宣行の母と次第に親密になり、いろいろなことを聞き出していく。客観的というよりは、多分に主観的、感情的な本だが、逆にそこがこの本を面白くしていると思う。

読後にすぐに思ったのが“やさしさ”について。確かゴーマニズム宣言にこう書かれていた。

『本当のやさしさは、その内側に厳しさを含んでいる』と。

佐藤は両親に溺愛されて育った。何をしても怒られなかった。溺愛とはある種の虐待であると僕は思う。社会に出てから困るのは、他でもない甘やかされて育った子どもなのだから。

佐藤が生まれたとき、彼の父親は62歳で、同級生から見ると

「おじいちゃんみたい」

そう言われるほど、年を取っていた。この父親は、何があろうと息子を怒らなかった。佐藤に罵られ、丸めた新聞紙で頭を叩かれても。

そして36歳と高齢で佐藤を出産した母親も、甘やかし続けた。保険の外交員として優秀だった彼女は、佐藤が欲しいというものを何でも買い与えた。

それは、佐藤が引きこもりを始めてからも続き、やがて佐藤の欲しがるアイドルのCDや雑誌を買いに行かされるまでに発展する。

その接し方を見ていると、佐藤の両親は、息子の事を考えていないし、あまりに無責任で、本当の意味でのやさしさを持っていなかったと僕は思う。

間違っているなと思ったら、時には暴力を振るってでも、息子に教育をすべきなのではなかっただろうか。

佐藤が一度両親に

「親なんだからなにかあったら、かかって来い。親なんだから気をつかうな。堂々とした態度で叱ってくれ」

と訴えたという記述からも、佐藤自身が叱ってくれる事を望んでいたのは明白だ。

ちなみにタイトルの『14階段』とは、少女が監禁されていた家の階段の数の名前である。息子が逮捕された後、筆者たちと一緒に酸素呼吸器をつけ老いた母親が、踏みしめるように、上がっていく姿が印象的だ。

20年間、息子か一歩も上がることを許されなかった、14階段を。

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三つ子の魂百まで

この前、ある人にこんな事を言われた。

「小学生の頃の通知簿を読み返してみると面白いよ。担任の先生から書かれている性格が、そのまま今も残ってると納得できるから」

その時はそんなもんなのかなと聞き流していたのだが、家に帰って、あっと思った。

まるでマグニチュード7を越える、大地震でも起こった後かのように、散らかりまくっている。

そうだ。

「整理整頓ができない」

ずっと、これを書かれてきた。

部屋を見回し、なるほどひとり得心した。

たまには掃除でもするか。

久しぶりにそんな気持ちになった。

でも行動には移さなかった。

だから部屋は散らかったままである。

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第二回『作劇的人々』

『作劇的人々』の第二回をアップいたしました!

ゲストは作劇塾の“女帝”こと青谷圭さんです。

ぜひご覧下さいませ。

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やけっぱち

例によって花粉の季節。鼻水が止まらない。

開き直って寄生虫でも、飲んだろか。

そんな事さえ思ってしまう。

花粉症の特効薬を発明した人は、ノーベル賞もんだ。

※体内に寄生虫がいると、花粉症にならないという説があります

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安野モヨコ 『監督不行届』

去年の10月頃に『女性とエンターテイメント』という記事を書いた。まあ笑いは男性の方が向いているのではないかという事を書いたのだ。

僕は女性が感性だけで書いた作品が、凄く苦手だ。逆に言えば俯瞰で物事を見られる女性の作品は好きである。

僕の好きな女性漫画家は、さくらももこ、岡田あーみん、森下裕美、ねこぢる、など。

彼女たちは、自分を相対化して、客観的に見ることができる。だから読んでいて面白い。

07143967_jpg_2 最近、安野モヨコ 『監督不行届』を読んだのだが、非常に面白かった。安野モヨコもまた自分を客観視できる人間だ。

どんな内容の漫画かと言えば、夫である庵野秀明との結婚生活を面白おかしく、描いている。

これまでの人生において、オタク系男子と付き合った事のなかった安野モヨコが(理由は自分がオタクだと自覚していたから)、オタクの日本代表みたいな庵野監督との生活で、自分の中へと必死に抑え込んでいた、オタクさを段々と発揮していく所が笑いを誘う。

巻末で庵野監督の語りが収録されている。

「嫁さんはただのオロノケマンガにならないよう、読者サービスを主体にいつも真摯に考えていましたね」

と監督は語る。

よく見知らぬ女性のブログを読んでいると、ひたすらノロケているだけのブログに遭遇する事がある。山でヒグマに会うよりは、幾分マシかとは思うが、それでも一瞬「ああっ出くわしたか」と精神的なダメージをこうむる。

嫌ならすぐにバッテンマークを押して、ページを閉じればいいのに、なぜか見てしまう。そして読んだ後、「うーん。これは新手の嫌がらせだな。けしからん」と同じ感想を抱くのだ。

話が脱線してしまったが、徹底してエンターテイメントにこだわる、安野モヨコさんの姿勢に深く共感し、自分もこうありたいもんだなと思ったという、お話でした。

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有栖川有栖創作塾・第七期始まる

本日より創作塾の第七期が幕を開けた。

詳しくはこちらのブログをお読みいただくとして、見学に来られていた、プロの編集者の方から、たくさんの有益な情報をお聞きした。

創作塾から帰ってくると、いつも書かなきゃなあと思う。

無理にそう思おうとしているのではなく、自然とそういう気持ちになるのが良い。

さあ頑張るぞ。

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肌色の廊下

なんでやドア開かへんやんけ

クッソー、もう家出なあかんのに

このままやったら遅刻してまうぞ

ほんま、どないなってんねん

ああ、クッソー

全然開かへん

おかしいな

鍵は開いてるよな?

うん、開いてる

あっちょっと開いた

なんやろ?

隙間から肌色の物体が見えたけど

ああ、段々ドアが開いてきた

ちょっとずつやけど

これは何とかなるかもしれん

よっしゃー、完全に開いた

うーわ、廊下、力士だらけやん

しかも全員死んでるし

何で裸やねん

何があったんや

何で人の家のマンションの廊下まで来て

全裸で死ななあかんねん

もうええわ、踏んで行こ

会社遅れるからな

踏むしかないわ

うーわ、めっちゃ柔らかいやん

結構弾むなあ

トランポリンみたいや

なんや、朝からテンション上がってきたなあ

あれっ……

今、なんか人のうめき声が

うーわ、こいつだけ生きとったやん

めっちゃ睨んでるし

いや、そんな顔されてもやな

勝手に廊下で寝てるやつの方が悪いし

やめろや

足、掴むなや

離せや

会社遅れるやんけ

うーわ、めっちゃ力強いし

あっエレベーターのドアが……

誰でもええから助けてくれ

おお、親方らしき人が

ついに力士の死骸の回収にって

帰るんかい!

何しに来たんや

こいつ、さっきから全然足離さへんぞ

うーわ

足、血の気なくなってきてるやん

なんか冷たくなってるやん

しゃあないなあ

先に電話しとくか

あっもしもし課長ですか

ちょっと今日、遅れます

なんかね

力士が離さへんのです

いや、足を掴まれてね

えっ会社の廊下も力士だらけ?

ほんまですか

日本はいったい、どうなってんねや

こんだけ力士が死んでたら

国技なくなるっちゅうねん

それはさておき

会社、休も

だってこいつ離さへんねんもん

しかも全く話さへんし

なんか物言えよ

なにが「ごっつあんです」やねん

お前、あれやろ?

「ごっつあんです」と「どすこい」以外に言葉知らんやろ

うーわ、めっちゃ頷いてるし

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二人の猫バカ

数年前の出来事である。兄と偶然、京都競馬場で会った。

最終レースの後、僕らは淀の商店街にあるコロッケ屋さんで、安くて美味しいコロッケを数個買い、淀城公園に赴いた。

ちなみに僕の兄はヘヴィー・メタルをこよなく愛し、『BURRN!』を愛読するロック野郎で、ロンゲだ。

兄に言わせると『ヘビメタ』という言葉は蔑称らしい。きちんとヘヴィー・メタルと言わなければ、彼らは気分を害するようだ。思春期の女の子のように、彼らはとってもデリケートなのだ。

兄は昔少しやんちゃだったので、今でもヤンキーっぽい人間が前から歩いてくると、サングラスをシャッとかけて、ズイズイ前に進み、ガコンと肩をぶつけるという困った癖の持ち主でもある。

そう言えば僕が専門学校の頃、アメリカから短期留学で来ている人たちと交流する機会があり、僕より二つ上のアメリカ人男性(デイビット)を家に泊めるという流れになった。

兄はアメリカとオーストラリアに留学していた経験があったので、日常会話ぐらいは話せた。ということもあり、何とかなるだろうと僕は踏んでいた。

専門学校を出た、僕とデイビットは京阪電車に乗り、僕の実家の最寄の駅に向かった。数分後、兄が車で迎えにやってきた。

僕は割りと普通の格好をしているので、おそらくデイビットは、似たようなタイプの人間が来るのだろうと思っていたのではないだろうか。

だが無残にも彼の予想は裏切られた。

サングラスをかけて、ノッシノッシと歩いてくる兄(当時は90キロぐらいあった)を見たデイビット。僕の方を見ながら、必死に何かを訴えようとしている。

おそらく

『おいおい話が違うじゃないか。なんでジャパニーズマフィアが迎えるに来るんだい? ハンバーガーが食べたいぜ。オーマイガーッシュ!』

とでも思っていたのではないか。

見る見るうちにデイビットの顔は青ざめていった。

まあ、アメリカ人に迷惑をかけてしまう、そんな兄なのである。

で話は戻って、淀城跡の公園に僕らはたどり着いた。ここの公園には無数の野良猫が住んでいる。

奥に進むと必ず何匹かは目にするのだ。

中学生の頃から、京都競馬場に通っていた僕からすれば見慣れた風景であった。

兄と競馬の話をしながら歩いていると、いつものように野良猫が姿を現した。

そのときである。

「ニャーン」

そう言いながら兄は猫の方に駆け寄っていった。

僕はわが耳を疑った。だが兄の口から、確かにニャーンは発せられた。空耳ではない。

いかつい男が口にするフレーズとは思えなかったが、残念ながら事実であった。

今までの兄のイメージが、この「ニャーン」一言によって、完全に崩れ落ちてしまった。

兄は人目をはばからず野良猫と遊び始めた。

そう言えば数週間前に、兄嫁が捨て猫を拾ってきて、飼い始めたという話を聞いていた。

しかし、たった数週間で『猫バカ』に変化しているとは思ってもみなかった。

楽しそうに芝生の上で野良猫と戯れる兄を遠目で見ながら、僕はひとりベンチに座り、コロッケをポリポリ食べながら思った。

動物は人を変える力があるんだなと。

ちなみにこちらが兄の家の猫。

Photo

シイラという八歳の女の子です。

「かわいいっしょ?」とか言ってしまう僕も、結構『猫バカ』になりつつあるのかもしれない。ここだけの話ですが、この写真は僕の携帯の待ち受けです。

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『作劇的人々』

僕が作劇塾の塾生のみなさんにインタビューをし、記事を載せていく対談形式ブログ『作劇的人々』

ついに始動致しました!

どうぞ見てやって下さい。

よろしくお願いいたします。

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うるう年ベイビー

ああ、やっと外出れた

十月十日長かったで腹ん中は

ふー、しゃばの空気は美味いなあ

ところで今日は何日や?

自分の誕生日ぐらいは覚えとかんとな

ええっとカレンダー、カレンダー

あった

うーわ、最悪やん

今日2月29日やん

よりによって

なんでうるう年のこの日に

生まれてくるかなあ

確率で言うと1460分の1ですよ

絶対あれやで

誕生日プレゼントなんか4年に1回しかもらわれへんで

手口わかってんねん

なんかいきなりやる気なくしたわ

もういやや

胎内戻ろ

うーわ、最悪やん

産道の中にめっちゃ兄弟おるやん

何人おんねん

1,2,3,4,5……

なんで六つ子やねん

わしゃ、おそまつ君か!

絶対、愛情も6分の1やで

ほんまに、どんだけついてないねんな

いたっ!

誰じゃ今、顔蹴ったやつは!

お前か?

逆子で生まれたから言うて

兄貴の顔蹴るやつがあるか

もう怒った

気分悪い

わしゃ、どっか行く

なんやねん

引きとめんなや

男が一度決めたことは二度と覆ら……

なんや

へその緒切ってなかったんかいな

勘違いしたがな

恥ずかしいやんけ

しゃあないな

お産の手伝いでもしたろか

おーい、看護婦さんタオル持ってきてくれ

痛い痛い

なんやねんな

生まれたての人間の耳引っ張んなや

なんやて

今、看護婦言うたら怒られるんかいな

看護師って言わなあかんの

面倒くさいなあ

どうでもええやんけ、そんな事は

わし気分悪い

子宮に戻るわ

いたっまた蹴りやがったなあ

なんでお前らは長男を大事にせえへんねん

もっと儒教を勉強せえ

あーあ、今ので歯ぁ折れたわ

生えてへんけど歯ぁ折れた

ほんまにもう散々やで

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イラズンバ

ほんまに山の天候は気まぐれやで

あんだけ晴れる言うてたのになあ

ずぶぬれやで

おお、あっこに、ええ感じの横穴あるなあ

よっしゃ、あそこで雨宿りしよ

結構、横穴続いてるなあ

なにがあんのか気になるなあ

ちょっと奥に進んでみよか

あれっなんかミャーミャー言うとるなあ

あっこれは虎の子やなあ

なんで日本に虎の子が……

せやけどかわいらしいなあ

ミャーミャー言うとるなあ

んっまてよ

虎の子がおるっちゅうことは

ここコケツちゃうん

うーわ、やばいなあ

めっちゃ奥からグルグルって聞こえてくるし

絶対コケツやん

コケツってわかってたら

絶対入らへんかってんけどなあ

コケツかあ、しもたなあ

しくったなあ

来たで来たで

親分登場やで

やっぱり生で見るとでかいなあ

猫科とは思えへんなあ

いや、違うがな

別にいじめてるわけちゃうがな

ちょっとな雨宿りをさせてもらおうと

わかったがな

出ていったらええんやろ

うーわ、最悪や入り口からぞろぞろと

虎が入ってきたで

全部、大人やがな

だいたいおかしいがな

虎っていうのは集団で生活せえへんのと違うんか!

それを君らは習性を無視し

勝手に日本の洞窟に住み

そして繁殖し!

いやいや、言うてみただけですやん

ちょっとどいておくんなはれ

今出ていきますさかいに

ああ、爪を立てなはんな

そうや、ええこと教えましょか?

わし、阪神ファンでんねん

せやから虎は大好き

こんなところで

ほんまもんの虎さんに会えると思わんかったがな

ああ、こんだけ言うてもあかんねんな

せやから爪を立てるな言うてるやろ

痛いがな

ほら、これ絶対に跡が残るで

うーわ、なんか知らんけど

ライオン入ってきたし

ほんまにここコケツかいな

ライオン入れたらあかんで

なんたって百獣の王やで

こうなったら、やけくそや

オケツ出したんねん

イタッ!

また爪立てやがったなあ

コケツでオケツに爪立てられるってこれ

どないやねんな

あーあ、完全に囲まれたし

ライオンめっちゃこっち見てるし

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道端の読書

中央図書館へ行くときにJRの近くを通る。塩草の辺りだろうか? フェンスにもたれながら何かを読んでいるホームレスの老人がいた。

僕は、自転車でゆっくりと彼の前を通り過ぎながら、それとなく彼が手にしていた物を確認した。

内田康夫の小説だった。

老人の右隣には結構な高さの小説(文庫本)ばかりが積まれていた。

浪速区にある図書館や中央図書館へ行くと、漫画のコーナーによくホームレスが陣取ってしているので、あまり小説を読むイメージはなかった。

改めて先入観にとらわれてはいかんなあ、と思った三月一日であった。

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