一分映画、こぼれ話
先週の金曜日、塾で一分映画の撮影をした。詳しくは更新されている作激塾ブログをお読みいただくとして、ここから先はこぼれ話。
一本目の撮影が終わり、みんなは次の準備に取り掛かる。尿意を我慢していた僕がトイレへ行き戻ってくると、監督青谷圭の指示で、出演者である小波くろがメイクをしていた。
用意が整い、少し休憩という時。おもむろに小波が立ち上がった。何だろうと思っていると、ツカツカとBOMちゃんに歩み寄り、何か話し始めた。
僕の角度からは、小波の背中とBOMちゃんの顔が確認できる。その表情は明らかに怯えている。
無言で何度も頷いた後、突然、靴を脱ぎだすBOMちゃん。
BOMちゃんの靴を履く小波。
どうしたんだ。一体なにがあった? 一気に不安に包まれる僕。
BOMちゃんの怖がり方は尋常じゃない。
その時、小波がこちらを振り向いた。
「ヒイィィィィ!」
思わず悲鳴を上げそうになった。
青谷監督にダーク系メイクを施された小波くろは、すんごく怖かった。左目の眼帯も、その怪しさに拍車を掛けている。
僕の方へゆっくりと近づいてくる小波。不気味だ。近づくほど、その怖さは増していく。
まるで、その様はテレビから出てきた貞子のようだ。
「どうしよう……。僕もBOMちゃんのように、靴を奪い取られるのだろうか。だけどなぜそんなに靴にこだわるのだ。このまま塾生、全員の靴を奪い取るつもりか? そんなハレンチな事をして、なにが嬉しいんだ。もしかして、靴フェチか? 靴を強奪された僕は、どうやって家に帰ればいいんだ。旧暦では春だけど、まだまだ外は寒いんだぜ。堪忍してくれ、金やるし。春はあけぼの、やうやう白くなりゆく山ぎは……」
まとまりのない思考が脳内を駆け巡る。恐らく僕の顔色も、だんだんと白くなっていってたはずだ。
もし清少納言がその様子見ていたら、恐怖のあまり、裸足で逃げ出していただろう。
じいっと黙って僕の顔を見ていた小波が、ついに口を開いた。
「……貸してよ」
何と言ったのか分からない。やはり靴が目的か? でもサイズは合わないぞ!
「……ぎ、貸してよ」
まだ聞き取れない。今思うと、それほど僕はびびっていたのだろう。
「だから、自転車の鍵貸してってば!」
「は、はい」
訳も分からず、鍵を差し出す僕。
小学生の頃、近所の不良に公園でカツアゲされた、嫌な思い出が一瞬、脳裏をよぎる。
BOMちゃんシューズで、小走りに外へと出て行く小波。
靴を取られないで良かった、そう思うと体の力が抜けた。
撮影後、話を聞くと、青谷監督に赤のマニキュアを塗って映画に出て欲しいと言われたのだが、持参したマニキュアを途中で使い果たしてしまったため、心斎橋まで買いに出かけたらしい。
それにしても、いくら急いでいたからと言って、眼帯をつけたまま買い物に行く事ないだろうに。
店員さんも恐怖のあまり
「お代は結構です」
と言いかねない。
※小波の「ねえ、誰か靴貸してよ」に対し「いやあ、勘弁して下さいよ」と言いながらも、あまりの恐怖に笑ってしまう一同。
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