« 先手必勝! | トップページ | 一分映画、こぼれ話 »

親父の寝顔

母に頼まれ、いやいや父の寝室に向かった

父の寝起きが悪いのは今始まった事ではない

無傷でいられるだろうか

嫌な予感を覚えながら、ドアノブを回す

部屋に入るのは何年ぶりだろう

小学校の頃に入ったのが最後だった気がする

ゆっくりと足を踏み出す

スー、スーという寝息が聞こえてきた

右手を伸ばし壁のスイッチに触れると

室内が明るくなった

布団をめくると

女子高生の格好をしたまま寝入る、親父の姿があった

相も変わらない、倒錯的な趣味

目をそむけたくなる

と言いたいところだが、なぜか俺はひきつけられた

親父の寝顔を見て

「なかなか、かわいいじゃないか……」

不覚にもそんな事を思ってしまった

胸のドキドキが止まらない

どうやら俺は親父に惚れてしまったらしい

たくましいその肩に触れ、優しく親父を起こした俺は

耳元でそっと呟いた

「付き合って下さい」

すぐさま拳が飛んできた

鼻骨の折れる音がした後、激烈な痛みを覚えた

だが俺の気持ちは変わらなかった

いやむしろ先ほどよりも燃え上がっていた

すぐに上手くいかなくてもいい

密かに心に誓った

いつか親父の首を縦に振らせてみせると

俺は鼻血を拭いながら、窓の向こうに目をやった

一羽のツバメが軽やかに飛んでいた

|

« 先手必勝! | トップページ | 一分映画、こぼれ話 »

」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.f.cocolog-nifty.com/t/trackback/1117981/28888314

この記事へのトラックバック一覧です: 親父の寝顔:

« 先手必勝! | トップページ | 一分映画、こぼれ話 »