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『姉さんと呼ばれた女』

去年の事である

対立していた組員に狙撃された

某暴力団の組長が

我が家の庭に逃げ込み、そのまま絶命した

偶然、朝刊を取りに家を出た私が

組長を発見し、警察に連絡をしたのだ

その組長は大層、慕われていたらしく

それからと言うもの

我が家の庭に、ほとんど毎日

組員と思われる人間が来訪し

花や酒、タバコなどを供えていった

誰が提案したのかは知らないが

私の家の庭に、組長の銅像を建てる事が決定し

三ヶ月かかって、ようやく銅像が完成した

我が家の庭なのに、なぜか私が口を挟む余地などなかった

前にもまして、組員たちが庭を訪れ

顕花したり、あるいは銅像を前に涙している

そして、いつしか私は組員から姉さんと呼ばれるようになった

ご近所さんからは、完全にそっちの人と思われているようで

迷惑この上ないのだが

今となってはどうする事もできない

朝、起きると朝刊を取りに行き

そして組長の銅像の前を掃き掃除をする

それが私の日課となりつつある

今まで平々凡々に生きてきたのに

六十を過ぎてこんな事になるとは思ってもみなかった

人生というのはわからないものだと

つくづく思う、今日この頃である

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