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『神のちから』 さくらももこ

Kaminotikara さくらももこは、シュールな人だ。と言うか、シュールな笑いが好きな人である。

国民的漫画となった『ちびまる子ちゃん』は、一般受けしやすい漫画だ。著者の才能が豊かなので、メジャー用のネタとマイナー用とで、使い分けができるのだろう。

クリエイターを大まかに分けると、メジャー、マイナーと媒体を問わずに作品を作れる人と、いわゆるガロ系といった描きたい物を表現するというマニアックな人の2パターンに分かれるのかなと思うが、さくらももこは明らかに前者だ。

『ちびまる子ちゃん』のように、わかりやすいキャラクターギャグも描ければ、『神のちから』や『永沢君』といったシュールでブラック極まりない作品も描ける。

『神のちから』は、本当にシュール極まりないとしか形容できない話が、たくさん収録されている。僕は、大好きな漫画なのだが、これを面白いと思うかどうかは、その人の好みに委ねられると思う。いきなりこれを描いて、投稿か持ち込みをしても、かなり高確率で「これはちょっと」と言われると思う。『さくらももこ』という名前があってこそ、初めて商売として成立するのだ。

この前、『ちびまる子ちゃん』の3巻を読み返していて、「あっ」と思った。

正月、まる子の家に親戚の子どもたちが集まるのだが、そこに『みどりちゃん』といった一風変わった女の子がいる。彼女は、まる子の祖父である友蔵の知り合いの家の娘で、親戚ではない。

カルタでまる子、とかなりいい勝負をしたみどりちゃんだったが、一枚差で敗れてしまう。その後、悔し涙を流す彼女を見てまる子たちは

「こんな遊びでも負ければ悔しがる、りっぱな血筋の子どもなんだな」

と感心する場面がある。まあそれはいいのだが、その後まる子の母親がお雑煮を運んでくる。

ハフハフ言いながらも、笑顔でお雑煮を食べる子どもたち。

ここで、ポツリとみどりちゃんが言う。

「…おぞうにって笑いながら走ってくる、かぶき役者みたい…」

これは、さくらももこのシュールさが『ちびまる子ちゃん』の中で炸裂している瞬間だぞと、僕はひそかに感動した。

まる子の返答はと言うと、顔に縦線を走らせながら

「ふーん、………そう」

と苦笑いを浮かべるだけなのだが、『ふーん』と『そう』の間の三点リーダーが三つ続くところがミソだ。それだけ、まる子が困惑しているという証拠である。

ちなみに、『ちびまる子ちゃん』に出てくる登場人物の苗字(花輪、丸尾、みぎわなど)は、ガロでよく漫画を描いていた人たちの名前から取られている。

こういう所にも、わかる人にだけわかる仕掛けがしてあるのだ。きっと、さくらももこはかなりの漫画オタクなのだろう。

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