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『オモライくん』 永井豪

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この前、筒井康隆氏の『本の森の狩人』という本を読んでいたら、永井豪氏の『オモライくん』を紹介していた。

『本の森の狩人』は、筒井氏お薦めの小説を紹介していくという本なのだが、その中で唯一、含まれていた漫画が『オモライくん』なのだ。

これは読んでみないと思い、何とか手に入れ目を通した。

想像以上だった。

こんなに汚い漫画は久しぶりに見た。

本当に汚い。

読んでいて何度も目をそむけたくなった。

でも面白い。

だからついつい読んでしまうのだ。

僕は汚い作品に対する耐性は強い方だと思う。

筒井氏の『最高級有機質肥料』や『俗物図鑑』を読んでも

数時間後にはいつも通り食事ができた。

しかし『オモライくん』はダメだ。

後を引く。

言っておくが面白いのである。

ある意味、漫画史に残る作品だ。

ブラックジョーク好きな人なら、多分大好きだろう。

でも汚い。

何度も言って申し訳ないが、本当に汚いのだ。

その手の話がお嫌いな人は、どうかこの先を読まないでいただきたい。

『オモライくん』に収録されている、とっても汚い話を紹介する。

『恐怖のアカ笛』という話。

オモライくんは乞食なので、縦笛を持っていない。

しかし、気転? を利かせて

自身の体にまとわりついている“垢”をこそぎどって

垢でできた縦笛を作ってしまう。

しかし、この垢笛と音楽の音川先生の縦笛が、ひょんなことから入れ替わってしまう。

何も知らずに垢笛を吹く音川先生。

笛は段々と溶け始める。

ネバネバと粘り気を出し始め溶けていく。

必死に溶け始めた垢笛を吹く音川先生。

ドロドロになった垢笛は、音川先生の口にまとわりつき

得たいの知れない物体(垢なのだが)となってしまう。

そして午前十時二十分、音川先生は発狂してしまう、というオチ。

オモライくん、これだけ汚いのだから、さぞ差別を受けているかと思えば

そんなことはない。

確かに避けられてはいるが、心底嫌われているわけではないのだ。

その証拠に、『恐怖のアカ笛』の冒頭で

お腹についた垢をそぎ落とそうと、刃物を腹に当てようとした際

クラスメートから

『笛が買えないくらいで、ハラきるなー』

と心配される。

クラスメートは、彼が切腹しようとしていると、勘違いしたわけである。

このオモライくん、底抜けに明るい。

いつもにこにこと笑っている。

この明るさが、ギリギリで作品を成立させているような気もする。

実はオモライくんが原因で、受け持った教師が次々に死んでいくのだが

それでも彼はケラケラ笑っている。

それにしても、これを週刊少年マガジンで連載していたというのが凄い。

ガロなどの雑誌にブラックな作品が載るのはわかるのだが

少年誌にこの手の作品が掲載されるというのは

アッパレという他ない。

少年ジャンプに連載されていた『ハレンチ学園』もそうだが

今読むと「これを商業誌でやってたの? しかも少年誌?」という驚きがまず先に立つ。

今の少年誌ならありえない。

筒井氏もそうなのだが、超一流のクリエイターというのは

そのジャンルでできることを最大限に模索し、読み手に

「こんなことまでやっていいんだ!」

という驚きを与え

同業者やクリエイター志望者から、羨望のまなざしで見られるのだ。

この『オモライくん』。ダイエットをしたい方にはかなりお勧めである。

毎日食事前に一話ずつ読めば、食欲がなくなり痩せること間違いなしだ。

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コメント

('仄')パイパイ

投稿: | 2014年1月16日 (木) 15時31分

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