書籍・雑誌

『セックス障害者たち』 バクシーシ山下

01692075 藩金蓮さんからお借りしていた『セックス障害者たち』を読み出したら、止まらなくなって一気読みしてしまった。

出てくるのは全て異形の者たちである。著者であるAV監督バクシーシ山下が、過去に関わった人間を、作品とともに振り返っていく。

自由自在に吐瀉物を操れる男、飲尿マニア、どんな状況でも相手が誰でもエレクトさせられる男、ヤギを見て興奮する者など、まあマニアな人たちがわんさか出てくる。

面白かったのが、『密閉監禁七日間』の話。地下で男と女を一週間、監禁しその模様を撮影するという趣旨のビデオなのだが、食料という事で地下に鯛や鶏が用意されている。

お腹が減ったらそれを捌くわけなのだが、板前経験のある男優、花岡じったが料理をして一番初めに食べる。その後は、序列の通りに食べていくという流れなのだが、これはAV女優(バクシーシ風に言えばAVギャル)の扱いにしても全く同じなのだ。

先に花岡じったが手をつけて、その後に他の者たちが行為に及ぶという、完全に原始的な世界になっている。

バクシーシ山下のシニカルな視点も面白い。これだけおかしな人たちと接していながら、自分はいたってクールなのだ。彼の基準は、変わっているかどうか? 社会的に不適応でおかしな人間に興味を引かれるようである。

突き詰めると、やっぱりこの人も“人間”というものに興味があるんだなと感じた。それを自分の作品を通して、どう表現していくかをやり続けたのだろう。

ただ、バクシーシ山下の友人であるカンパニー松尾から「お前の撮影したAVを見て、興奮した事がない」と言われるぐらい、エロからはかけ離れている。

AVの形こそとっているものの、この人のやりたかったのは“壮大な実験”、人は危機的な状況に追い込まれると、どのような顔を見せるのかを、目の当たりにしたかったのではないか?

僕はこの本を読んで、そう解釈した。

| | コメント (3) | トラックバック (0)

『14階段』 窪田順生

09389702 藩金蓮さんのブログの、この記事を読んだあと、久しぶりにドキュメンタリーを読みたくなって、図書館で『14階段』を借りてきた。

拉致事件としては、あまりに有名な『新潟少女九年二ヶ月監禁事件』のルポルタージュである。

普段、小説を好んで読んでいる僕からすると、あまりの救いのなさに顔を顰めながらも、最後までページをめくる手が止まらなかった。

著者の窪田順生は、監禁犯の佐藤宣行の母と次第に親密になり、いろいろなことを聞き出していく。客観的というよりは、多分に主観的、感情的な本だが、逆にそこがこの本を面白くしていると思う。

読後にすぐに思ったのが“やさしさ”について。確かゴーマニズム宣言にこう書かれていた。

『本当のやさしさは、その内側に厳しさを含んでいる』と。

佐藤は両親に溺愛されて育った。何をしても怒られなかった。溺愛とはある種の虐待であると僕は思う。社会に出てから困るのは、他でもない甘やかされて育った子どもなのだから。

佐藤が生まれたとき、彼の父親は62歳で、同級生から見ると

「おじいちゃんみたい」

そう言われるほど、年を取っていた。この父親は、何があろうと息子を怒らなかった。佐藤に罵られ、丸めた新聞紙で頭を叩かれても。

そして36歳と高齢で佐藤を出産した母親も、甘やかし続けた。保険の外交員として優秀だった彼女は、佐藤が欲しいというものを何でも買い与えた。

それは、佐藤が引きこもりを始めてからも続き、やがて佐藤の欲しがるアイドルのCDや雑誌を買いに行かされるまでに発展する。

その接し方を見ていると、佐藤の両親は、息子の事を考えていないし、あまりに無責任で、本当の意味でのやさしさを持っていなかったと僕は思う。

間違っているなと思ったら、時には暴力を振るってでも、息子に教育をすべきなのではなかっただろうか。

佐藤が一度両親に

「親なんだからなにかあったら、かかって来い。親なんだから気をつかうな。堂々とした態度で叱ってくれ」

と訴えたという記述からも、佐藤自身が叱ってくれる事を望んでいたのは明白だ。

ちなみにタイトルの『14階段』とは、少女が監禁されていた家の階段の数の名前である。息子が逮捕された後、筆者たちと一緒に酸素呼吸器をつけ老いた母親が、踏みしめるように、上がっていく姿が印象的だ。

20年間、息子か一歩も上がることを許されなかった、14階段を。

| | コメント (2) | トラックバック (0)

その他のカテゴリー

18禁 | おすすめマンガ | 映画・テレビ | 書籍・雑誌 |