『おいで、おいで』

おい、タケル

あれ、見てみ

おっきな犬やなあ

ほら、あれやあれ

あっこで飼い主の立ち話、座って待ってる犬おるやろ

あんな、でかい犬見た事ないで

なんやねん、お前犬に興味ないからって

その反応はないやろ

もう帰るんかい

部活で疲れたって、それは俺も同じや

自分だけがしんどいと思うなよ。でも帰るんやったら帰れや

ほな、また明日

しかし、でかいわ

感動するね

大きい事はいい事だって

誰か言うてたけど、その通りやわ

あれっ、なんやろ

なんか犬の背中にチャックみたいなものがあるなあ……

あーあ、内側から開かれて、なんか出てきたで

飼い主、話に夢中でぜんぜん気ぃついてないやん

うーわ、裸のおっさんが三人も出てきたやん

よう入っとったなあ、一人、ぜんぜん動かへんやん

あーあ、動かへんやつ、外に放り出されたで

死んでるんとちゃうか、一人中へ帰って行きよった!

せやけどもう一人、外に残ってるなあ

うーわ、あいつめっちゃこっち見てるやん

手招きしてるやん

あの笑顔が逆に怖いわあ

でも行ってみたら何かが変わるような気も……

まだ手招きしてるなあ、人生変わるかなあ

どうしよかな

悩むなあ、受験勉強とかだるいしなあ

あかん、あのおっさん俺が入るまで

ずっと手招きし続けるつもりやわ

今日、帰って阪神、巨人戦見たいけども

うーん、どうしよう

あかん、体が勝手に犬の方へ吸い寄せられるう~

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『ホトトギスの思い』

うーわ、家康来てるやん

あーあ、予感的中や

こっち来よったがな

なんやねん、気持ち悪いなあ

なにをじいっと見とんねん

うーわ、ゴザ敷いて座りよったで

俺が鳴くまで待とうっちゅう魂胆かいな

ほんまになんやねんな

向こう行って下さいよ

そない近くで見られたら鳴こうにも鳴けへんがな

こいつ全然、鳥の気持ちわかってないやん

向こういけよ、家康、向こう行けって家康

征夷大将軍かなんか知らんけど、どんだけお前暇やねん

うーわ、メール打ち出したで

何を書いてるんや……は、拝啓、信長さま?

お前、そいつは呼んだらあかんがな

大変な事になるがな

なになに……私の力ではホトトギスを鳴かすのは困難と思われ……

完全にこいつ信長呼んどるやん、媚びてるやん

お前、自分でなんとかせえよ

自分の力で俺を鳴かせてみろよ

なんで信長の力を借りようとするねん

あっ返信あったみたいやな

「了解」やと

こ、これはやばい事になるぞ

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『鳴くまで待つ男』

あれっ縁側に誰か座ってるなあ

家族ではないみたいやけどなあ

誰やあれは……

あっ、あれ家康やがな

最近見てへんと思ったら現れやがったな

なんや、あいつ鳥かごをジイッと見つめて

ああ、そうか昨日からの流れでわかったぞ

あいつ鳴くまで待つつもりやな

あれっ、なんやコックリコックリと

もう寝てもうてんのかいな

寝てたらホトトギスが鳴いても気ぃつけへんで

おい、家康、起きろって

お前寝てもうたら、あかんやないか

何をしてるねん、何を

あっお前起きとったんかい

なんやねん

何をニヤニヤしてるねん

「これがほんまの狸寝入りや」やって、やかましいわ!

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『猿とホトトギス』

ただいま、あれっ庭に誰かおるなあ

うん?

あれ、秀吉ちゃうんかいな

間違いないわ

秀吉やわ

あいつ、鳥かごの前で何してるねん

ああ、そうか

そういう事ですか?

何とか鳴かせようとしてるんかいな

せやけど、うちのホトトギスは中々、鳴かへんよ

それを鳴かせようと言うんやから

秀吉のやつ、チャレンジャーやね、羽柴チャレンジャー秀吉やね

何や、あいつ

急に飛びはねてからに

なんぼ猿に似てるからって

あないにウキウキ言わいでもええのに

ああ、やっぱりや

秀吉がなんぼウキウキ鳴いても

うちの、ほととぎすは鳴かへんねえ

猿真似ではあかんちゅうこっちゃ

あーあ、秀吉すねてもうて

地面に『の』の字を書き出したで

せやけどあれやなあ

こうやって、後ろから秀吉見てると

猿そのものやなあ

あっしまった目ぇ合わせてもうた

猿は目ぇ合わせたらあかんのに

いやあれは秀吉やからええんか

でも猿そっくりやからなあ

うーわ、めっちゃこっち威嚇してるし

ホトトギス鳴かせに来たんちゃうんかいな

ほんまに忘れっぽい猿やで

勝手に人に家の庭入ってきて何をしとんねん

保健所呼んだろか

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『THE鵜』

やめろや、食わせろや

俺が取った魚やぞ

喉に指入れんなや

オエッてなるやんけ

あかん、吐き出したないのに

吐きたくなってきた

もう、最悪や

めっちゃ魚、消化したかったのに……

あーあ、逆流してきたがな

クソッ

でも出したら鵜匠の思う壺や

意地でも出したるかい!

ここはぐっと我慢……

クッ……

悔しいなあ

めっちゃ悔しいわ、こんな悔しい事ってあるやろか

結局出してもうたがな、魚、吐き出してもうたがな

何が「ご苦労さん」やねん

腹立つおっさんやわあ

にっこにこ笑ってるやん

でも悔しいけど、鵜匠のこの笑顔見たら

また魚取って来たくなるねんなあ

なんで鵜になんて生まれたんやろか

はいはい、行きますわいな

行ったらええんやろ

せめて、この喉に巻いた紐だけは取ってくれへんやろか

どうもこれが気持ち悪うて

あかんか? こんなに言うてもあかん?

はいはい、わかりました

鵜に自由なんてないんやね、聞いた私が悪うございました

ほな行ってきます、ザブン

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『箱の中の戦争』

ちょっと、おかあさん

いいから来てよ

ほらこの前に

山梨のおばあちゃんが送ってきてくれた桃あったでしょ

あれが大変なことになってるのよ

洗濯物なんかいいから、はよ来てよ

わかったわ

手が離せへん言うんやったら

状況だけ説明するね

全部の桃の中から何か出てきてるの

虫じゃないって

人が出てきたの

ちっちゃい人がね

いっぱい出てきてはるわ

「何言うてんの?」って、ほんまやねんて

ああ、やっと来てくれた

ほら、箱の中見てよ

いっぱい人が出てきてるでしょ?

ああ、そう言われたらそうやね

よう見たら全員、桃太郎やねえ

ああ、持ってる刀で切り合い始めたわ

えらい血が飛び散ってるわ

ほんまに野蛮やわあ

おかあさん、山梨のおばあちゃんに電話してくれる?

「なんで?」て

こんなに桃が血まみれなったら食べる気せえへんわ

私、桃が大好物なん知ってるでしょ?

せやから電話してよ

うわー、箱の中血まみれやわ

大惨事とはこの事やね

面白いからしばらく眺めてよっと……

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『口から生まれてすいません』

うーわ、なんやのこの子

口から先に生まれてるやないの

ちょっと、お父さんも先生も

ぼーっと見てるんやなくてな

捕まえてよ

先に口捕まえとかんと

どっか逃げてもうたら取り返しつかへん事になるで

あたし、赤ん坊の体が出てくるまで動けへんがな

何が「お前のせいや」やの

あんた、この状況でようそんな事言えたなあ

そら、あたしはよう喋るで

口から先に生まれてきたって何べんも言われたわ

せやけど、それとこれとは別やないの

今はその口捕まえるのが先決ちゃうの?

なんか情けなくて涙出てきたわ

それにしても、すばしっこい口やなあ

みんな完全についていけてないなあ

ちょっとみんなしっかりしてや

はよ、捕まえてえな

あたしは分娩台で眺めてるさかいな

あれ、あれれ

なんでやろ

また股の間から口が出てきたがな

どういう事やの?

双子かいな?

いやエコー写真では一人しか写ってなかったもんなあ

双子ではないな

ほんならなんでや?

なんでとか言うてる間に、また股の間から口が……

もういややわ

なんでこんな事になるのよ

あたし、なんかした?

これ絶対なんかの呪いやで

あーあ、次から次へと口が出てくるわ

下の口から、たくさんの口が……

もうこうなったら仕方ない

最後の手や!

何してんの?ってあんた

口たちを睨みつけてるんやないの

ほら昔から言うやろ?

“目は口ほどに物を言う”って

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『確率は4分の1』

ああ、やっぱりや

嫌な予感ちゅうのは当たるもんやね

今さらこんな事言っても遅いけど

桃太郎があれを言い出した時

もっと反対すれば良かったわ

何が『きびだんごロシアンルーレット』やねん

それもな

中にカラシとかワサビが入ってるぐらいやったらええわ

毒入りってなんやねん

命にかかわるやんけ

なんでそんな命がけの遊びせなあかんねん

でもな

目の前に団子置かれたら食べてまうやん

俺、犬やねんから

その辺やっぱり我慢できひんやん

畜生やねんからね

ああ、絶対そうやわ

俺が毒入り食べたんや

なんかフラフラするし視界がぼやけてきてるもん

桃太郎呼びたいのに声が出えへんがな

あーあ、キジとかサルとか楽しそうやな

サルなんかキャッキャ言うてるもんなあ

どうやらここまでか

鬼が島行きたかったなあ

桃太郎と出会うのに三年もかかったのになあ

ほんまに残念やわ

あーあ、桃太郎たちが遠ざかって行く

そして俺の夢も……

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『最強メンバー』

友人を連れ立って、久々になじみの雀荘へ赴くと

入り口の雀卓を四人組が囲んでいた

キリスト、釈迦、マホメット、そして麻原彰晃

どっからどう見ても本人にしか見えないくらい、よく似ている

隣の雀卓へと移動した俺は

誰が勝っているのかなと

横目でちらちら彼らの方を気にしていた

麻原の圧勝であった

俺が解せないでいると、友人が耳打ちしてきた

「おい、麻原は盲牌ができるんだよ」

彼のその言葉を聞いて、一気に疑問が氷解した

結局、ずるい奴が勝つのである

神も仏もイカサマ師相手だと分が悪いらしい

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『頭に五寸釘』

あっ、いつの間にか、うとうとしてたみたいやな

うーわ、最悪やん

頭に釘刺さってるやん

グッサー刺さってるやん

痛いわあ、ほんまに痛い

なんでこんな目に合うんやろか?

わし、なんか悪いことしたか

もしそれやったらこんな仕打ちする前に言うて欲しいわあ

ああ、これ抜けへんかなあ

うんしょ、こらしょ、どっこいせのせ

あかんわ

完全に釘が頭を貫通しとるね

せやのにこんだけ喋れてるのが奇跡やね

でも誰もほめてくれへんのが哀しいね

おーい、誰かいてんかあ

あのなあ、頭に釘刺さっとんのや

自分ではどないもでけへんねん

誰か来てくれー

そして釘を引き抜いてくれえ

礼はするさかいに

なんやねん

こんだけ呼んでも誰も来えへんやん

あっやっと誰か来てくれたみたいやな

呼んだ甲斐があったっちゅうもんやで

誰かが言うてたなあ

「あきらめたら、そこで試合終了ですよ」って

うーわ、最悪や

職人来てるやん

ほんまにもう、なんなん?

自分なんか呼んでないし

あーあ、包丁きらつかせて

もうサバく気、満々やん

えっなんやて?

これは五寸釘やなくて『目打ち釘』って言うの?

いや、死ぬ間際にそんな豆知識教えられても困るし

めっちゃドヤ顔してるし

はーあ、今更こんなこと言うのもおかしいけど

なんでウナギに生まれてきたんやろうな

来世は別の生き物に生まれ変わりたいね

アナゴなんかいいね

いや、アナゴはあかんな

あんまり今と変わらへんもんな

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『真剣勝負パンツ』

ふー、ただいま

あれっ、なんや家ん中シーンんしてるなあ

おかん、買い物行ってるんかな?

困るなあ

クラブ活動を終えて腹ペコの息子が帰ってきたのに

飯が作られてへんとは一大事やで

ああっ、おかん、いてたんかいな

なんや、うたた寝して

あーあ、えらいヨダレやなあ

畳に染みいっとるがな

おいおい、いくら家ん中とはいえ股は閉じんかい

パッカー開いとるやん、パッカーって

もう見たくないもんが見えてますがな

うーわ、もしかしてこれって勝負パンツちゃうん?

なんで勝負パンツはいてるねん

引くわあ

母親のそういうのって引くわあ

その年なって誰と勝負する気やねん

誰と勝負しても負けるに決まっとるがな

いつまで女でいるつもりやねんな

あれっおとん

いつの間に帰ってたんや

びっくりするがな、黙って後ろ立ってたら

あっもしかして

おかんが勝負する相手って……

なんや、そういう事かいな

自分ら仲ええなあ

いや、ええ事やとは思うけども

さすがに息子の立場からすると

勝負せんといてもらえると助かるかなあ、なんて

こんだけ言うても、やっぱり勝負すんの?

うーわ、真顔で頷いてるやん

ほんなら、俺ちょっと用事あるし

出掛けてくるわ

「どこ行くねん」って、どこでもええがな

まあ朝になるまで帰らんと思うけどな

ほな、行ってきまーす

ごゆっくり

ふー、家族やのに

何でこんな気ぃ使わなあかんねんな

ほんまにお盛んな二人やで

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『竹から出てきて、すいません』

なんや、カンコン、カンコンうるさいなあ

昨日、地球来たとこやから、まだ眠たいねん

地球侵略会議が朝まで長引いて、うちあんま寝てへんねん

八時までやってからなあ

地球ついた言うて、みんなテンション上がってたからなあ

うーわ、最悪や

人に見つかってるやん

しもたなあ

竹ん中、入ってたら絶対見つからんと思ったんやけどなあ

盲点と思ったけどなあ

初日見つかるとは、ついてへんなあ

いやいや、そらな

竹の中に誰かおったら

びっくりするやろうけど

竹中平蔵でもびっくりするやろうけどな

そないに驚かんでもええやん

大げさなジイさんやなあ

あーあ、拝み出しよったで

勝手に神格化すんなって

いやいや、名前付けていらんし

頼んでへんし

『かぐや』ってなんやねん

うちはヘキョロン星人のトメや

ちゃんと、大王からありがたい名前もらってるんや

勝手に変な名前付けられてもやなあ

おいおい、やめろや

人の体をつまみあげるな

やめろや

何で虫カゴに入れようとするねん

うーわ、しかもカゴん中バッタだらけやん

「バッタやなくて、イナゴやで」とか細かいツッコミはええねん

「イナゴは佃煮にする」とか言われても、知らんがな

そらあんたんとこの事情やろ?

やめろって、ジイさん

強引やなあ

尻触んなや

何が何でもこの中に入れっちゅうんか?

わかったわ

入ればいいんやろ

おい、ジイさん、どこ行くねん

うちをこれからどこへ連れて行くねん

ジイさんて

行き先ぐらい教えてや

なあ、ジイさんて

なんで、答えてくれへんねん

こんだけ呼んでるのに耳遠いんやろか

おーい、ジイさーん、聞こえてるかあ?

あっわかったぞ

そういう事か

ここは虫カゴやなくて

無視カゴっちゅうわけやな

って納得しても、現状は何にも変わってへんし

あーあ、ヘキョロン星に戻りたいわあ

まさか、うちも佃煮にするつもりやないやろな

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『尻見酒』

リストラされた五人の中年男性を集め

粉雪の舞う庭に下半身裸で放り出す

横一列に整列させ、家屋に尻を向けるよう命じ

四つんばいの姿勢を取らせる

そのまま自室に向かい、読書をして夜になるのを待つ

丑三つ時になると庭に面した引き戸を開ける

当然、まだ男たちは尻を向けたままの体勢を取り続けている

雪の積もった男の尻を見ながら一杯呷る

そう、尻見酒である

弛んだ尻もあれば、毛むくじゃらの物もある

それぞれ個性豊かな五つの尻を見ながら

酒を呑んでいると、つい一句詠みたくなる

しかし、その気持ちをぐっと堪えて

また酒を呷る

空を見上げれば、大きな満月が浮かんでいる

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『浦島目線』

うーわ、またあの亀、子どもにイジメられてるやん

腹立つわ

あの亀、腹立つ

絶対、イジメられんの好きやんあいつ

この前、助けたったんは何やってん

俺が体張ってやな

しかも最後は金品まで、ガキどもに渡して

そこまでして助けたったのに

ほんまにあの亀は礼もせんと……

あっこに上がってきたら

子どもおるって、わかってるやん

あいつ絶対マゾやで

ほら、見てみいな、あの顔

恍惚としてるがな

亀は産卵する時に泣くらしいけど

なんかそういう表情に近いんちゃうかな

よう、知らんけど

せやけど、見るたびに亀のイジメ方がひどくなっていくなあ

なんや、縄持ってきよったで

あのガキ何するつもりやねん?

おーお、亀を縛り始めたで

そこまでするかねえ

これがほんまの亀甲縛りやね

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『クレイジー桃太郎』

おい、赤鬼

ちょっと、こっち来てみい

あれ見ろよ

とうとうやってきたがな

桃太郎が来たがな

もう、なんなんあいつ

モーターボート乗ってきてるやん

せこいわ

そらっそんなもんに乗ってたら

はよ、着くっちゅうねん

うーわ、しかもあいつ機関銃持ってるやん

やめやめ

そんなもん反則やぞ

こっちはお前、金棒しか持ってないんや

あーあ、撃ち始めたで

こら避難せんと……

うーわ、あいつ赤鬼ばっかり狙ってるやん

あーあ、赤鬼、血だらけなってるけど

元々、赤いからあんまり目立たへんなあ

あいつ完全にサディストやなあ

嬉々とした表情で、撃ってるもんなあ

おい、桃太郎、よく聞けよ!

これは俺の尊敬する映画スターの言葉や

『人を一人殺せば犯罪者だが

たくさんの人を殺せば英雄になれる』

これを鬼に置き換えてみい

自分のやっている事のむごさが、理解できるやろ

よしっ決まった!

これで、あいつもわかってくれたはず……って

桃太郎のやつ、全然聞いてへんやん!

俺、今めっちゃええ事言うたで

あかん、あいつクレージーや

ひたすら、鬼を撃つ事に快感を覚えとる

快楽殺人者の素質抜群やぞ

痛い痛い!

今、角に弾当たった

カーン言うたがな

うーわ、角の先、欠けてるやん

これもおオスとして失格ですよ

やばい、とうとう青鬼狙い出しよった

みんな、バッタバッタと倒れていってるやん

もうこれ完全に鬼全滅ですよ

たった一人の

桃から生まれた狂人の手によって

ここまで壊滅的打撃を受ける事になるとは

夢にも思わんかったね

とか言うてる間に全身穴だらけやし

うん、これ思ったより痛いね

もうちょい我慢できるかなと思ってたけど

ちょっと自分を過信しすぎたね

自分の皮膚を過信しすぎたね

防弾チョッキ買っといたら、良かったね

でも、そんな金はないね

このままいったら俺

多分、出血多量で死ぬなあ

しもたなあ、俺RH-やのに

誰も輸血してくれるヤツおらへんやん

あーあ、だんだん血の気引いてきたがな

こんなに青ざめてるのに、元々が青いから

普段とあんまり変わりへんっちゅうのが、哀しいところやね

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『ヅラはどこへ行った?』

ああ、もうこんな時間か

はよ会社行かな

あれっ、いつもの場所にヅラあらへんがな

困るがな

あれなかったら会社行けへんがな

ヅラどこや

うーわ、最悪や

なんでジョンのやつヅラかぶって庭、駆け回ってるねん

こらっちょっと叱らなあかんなあ

おい、こらっジョン

お前何しとんねん

ヅラ返さんかい

ジョンよ、ジョンさんよ

ヅラを返してくださいよ

待てってお前、どこ行くねん

そっちは道路やないか

うーわ、最悪や

佐々木さんの奥さんに見られてもうたやん

今までダンディなご主人と思われてたはずやのに

びっくりして家入ってもうたやん

完全に引いてたやん

ジョン、ジョンて

お前何が目的や

それは人間がかぶるヅラやねんぞ

お前は毛がフサフサやねんから

かぶる必要あらへんやないか

ジョン君

ちょっとこっち来なさい

ああ、やっと来よったか

離せ、わしのヅラやないか!

返さんかい

何がグルルやねん

お前、わしの魂のヅラ奪い取って

何、逆ギレしとんねん

返せって

踏ん張んなって

会社遅れるやろ!

あーあ、今変な音したぞ

ブチッ言うたぞ

ほら見てみい

お前のせいで、ここ裂けてもうたやないか

いや、いまさら返されてもやな

いらんし、こんなん

ついでにお前もいらんし

ええか? ジョン、お前は飼い犬として

最もしてはならん事としたんやぞ

よって今日限り

お前は、わしの家の敷居を跨がす事を許さん

って話聞かんと、もう家帰ってるし

ああ、どうしよかな

あっ佐々木さんの奥さん

おはようございます

あんまり頭ばっかり見んといて下さい

恥ずかしいんでね

えっこの箱、何ですか?

くれるんですか?

ちょっと開けてみてよろしいか?

うーわ、ヅラですやん

おおきに、これで会社行けますわ

この埋め合わせは必ずします

どうですか?

もし、良かったら今度デニーズでも行きませんか?

奢りますよ

あっ結構ですか? そうですか

せやけど、唯一の心配は

このヅラがアフロやっていう事やな

みんなびっくりせんやろか……

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愛は突然

母に頼まれ、いやいや父の寝室に向かった

父の寝起きが悪いのは今始まった事ではない

無傷でいられるだろうか

嫌な予感を覚えながら、ドアノブを回す

部屋に入るのは何年ぶりだろう

恐らく小学校の頃に入って以来なのではないだろうか?

ゆっくりと足を踏み出す

スー、スーという寝息が聞こえてきた

右手を伸ばし壁のスイッチに触れると

室内が明るくなった

布団をめくると

女子高生の格好をしたまま寝入る、親父の姿があった

相も変わらない、倒錯的な趣味

全く目をそむけたくなる

と言いたいところだが、なぜか俺はひきつけられた

親父の寝顔に

「なかなか、かわいいじゃないか……」

不覚にもそんな事を思ってしまった

胸のドキドキが止まらない

どうやら俺は親父に惚れてしまったらしい

たくましいその肩に触れ、優しく親父を起こした俺は

耳元でそっと呟いた

「付き合って下さい」

すぐさま拳が飛んできた

鼻骨の折れる音が聞こえたが

それでも俺の気持ちは変わらなかった

すぐに上手くいかなくてもいい

だが、いつか親父の首を縦に振らせてみせる

俺は鼻血を拭いながら、密かに心に誓った

窓の向こう、一羽のツバメが飛び立って行った

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『マザコン部長』

ああ、腹減った

飯にしよか

さてさて今日の弁当はと……

うーわ、なんなん

また、たこさんウインナー入ってるやん

おかんにあれだけ

たこさんウインナーだけは入れてくれるな、て言うたのにな

しかも、リンゴがうさぎさんやん

ほんで、ゆで卵はひよこさんやしやな

わし、これでも管理職ですよ

こんなもん部下に見られたから

格好悪いがな

うーわ、もう手遅れやん

完全に見られてるやん

なんかクスクス笑われてるし

今度からわしがあいつら叱ったとしても

たこさんウインナー食うてるくせに!

とか心の中で思われてるんやで

沽券にかかわるがな

ほんまに、おかんのやつ、何してくれてんねんな

おい! 係長

お前何してるねん

「へ?」やあるかい

何をお前、勝手に人のたこさんウインナー取ってくれてるねん

「食べるんですか?」って当たり前やがな

弁当に入ってるねんから、食べるわいな

返せ!

これは俺のたこさんウインナーや

あーあ、美味いなあ

改めて食べると

たこさんウインナーってほんまに美味しいなあ

これは癖になるで

よしっ決めた

おかんに言うて

明日もたこさんウインナー入れてもらおっと

なんかテンション上がってきたぞ!

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五限目

雷鳴のような咆哮と地響きで目を覚ました

クラスの生徒全員が窓際に集まっている

先生もそれを注意しようとしない

僕も窓辺に移動して外を確認する

ゴジラのような巨大な怪獣が

運動場を、のっしのしと

歩いていた

そして怪獣の真正面に

巨大化した、おかんが

ビキニを付けて立っていた

二秒後、怪獣は嘔吐し

そして宇宙へと戻った

おかんの勝ちだった

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『森のクマさん』

ええ、そうなんすよ

ちょっと学校さぼって

家まで帰ってたんですよ

スタコラサッサとね

森の中を歩いてたんですよ

そしたらね

クマさんに出会ったんですね

びっくりしたんですよ

花咲く森の道でね

まさかクマさんに会うと思わないじゃないですか

私も一応、か弱い女の子なんでね

やばいな

殺られるかなってね

一瞬、思ったんですけど

びびっちゃいけねえって思ってですね

クマさんと睨み合ったわけです

後ろを取った方が勝ちだってね

ピンと来たんで

だってそうじゃないですか

ゴルゴ13も後ろに立たれるの嫌うじゃないですか?

あれってそれだけ不利ってことでしょ?

それで後ろに回ったんですけど

よく見るとね

背中にジッパーがついてるんです

ああ、そういうことか

そっち系なのかと思いましたね

ジッパーに手を伸ばし

開けたらなんと

またクマさんが出てくるわけですよ

もちろんワンサイズちっちゃいんですけどね

そのクマさんの背中にもジッパーが付いてたんで

また開けてみたんですけど

また中にクマさんが入ってるんですよ

もちろん背中にはジッパーがついてまして

でね、あと一回だけにしようと決意して

ジッパーを開けたんですよ

そしたら、またクマさんが出てきたんでね

もう嫌になっちゃって

なんだかげんなりしちゃってね

でもここでやめたら私の負けじゃないですか?

だから勇気を出してジッパーを開けたんですよ

またまたクマさんですよ

もういいよって

ちょっとひつこくないか?って

クマさんに言ってやったんですよ

でもね

話をしながらも背中のジッパーが気になるわけですよ

それでね

いい毛並みしてますねとか

前からファンだったんですよとか言いながら

ドサクサにまぎれて背中に回りこみ

またジッパーを開けたんですよ

またクマさんです

もうここまで来たらとことんまで行ってやろうと

そう思ってね

開けまくってやったわけです

クマさん、ジッパー、クマさん、ジッパーの繰り返しですよ

今から思うとね

あの時の私は完全にどうかしてましたね

何かに憑かれていたとしか思えません

で、何度も何度もクマサンのジッパーを開け続けたわけなんですが

最終的にどうなったと思います?

これですよ

この私の手の上でヒョコヒョコ動いてるのが

実はそのクマさんの中身なんです

虫眼鏡渡しますんで

よおく見て下さい

ほら、背中にジッパーが付いてるでしょ?

まだ中に何か入ってるんです

これ開けたらどうなるんでしょうね

ピンセットお渡ししますんで

開けたかったら、開けてもいいですけどね

どうなっても知りませんよ

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『姉さんと呼ばれた女』

去年の事である

対立していた組員に狙撃された

某暴力団の組長が

我が家の庭に逃げ込み、そのまま絶命した

偶然、朝刊を取りに家を出た私が

組長を発見し、警察に連絡をしたのだ

その組長は大層、慕われていたらしく

それからと言うもの

我が家の庭に、ほとんど毎日

組員と思われる人間が来訪し

花や酒、タバコなどを供えていった

誰が提案したのかは知らないが

私の家の庭に、組長の銅像を建てる事が決定し

三ヶ月かかって、ようやく銅像が完成した

我が家の庭なのに、なぜか私が口を挟む余地などなかった

前にもまして、組員たちが庭を訪れ

顕花したり、あるいは銅像を前に涙している

そして、いつしか私は組員から姉さんと呼ばれるようになった

ご近所さんからは、完全にそっちの人と思われているようで

迷惑この上ないのだが

今となってはどうする事もできない

朝、起きると朝刊を取りに行き

そして組長の銅像の前を掃き掃除をする

それが私の日課となりつつある

今まで平々凡々に生きてきたのに

六十を過ぎてこんな事になるとは思ってもみなかった

人生というのはわからないものだと

つくづく思う、今日この頃である

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狼さんに聞きました

はいはい

そんなに何度もインターフォン押さなくても

出ますよ

えっ話ですか?

まあ別にいいですけど

立ち話で構いません?

ああ、やっぱり赤ずきんの話ですか?

ちょっと、まだ傷が痛むんで簡単でいいですか?

僕、散歩が趣味なんすけど

いつも通り、森の中を歩いてたら

前から赤ずきんが来たわけですよ

赤ずきんとは、初対面でしたけど

おばあさんとは顔見知りで

よくご飯とかご馳走になってましたし

大変、よくしていただいてるんですね

それで赤ずきんの話だと

おばあちゃんの具合がよくないんで

お見舞いに行くって言うんですよ

やっぱり普段、お世話になってるんで

心配じゃないですか?

だから一緒にお見舞いに行くことにしたんです

で来た道を引き返して

歩き出した瞬間ですよ

いきなり後頭部にガツンという衝撃が

えっ? あいつ木の枝で殴ったとか言ってるんですか?

ちがう、ちがう

多分、ハンマーかなんかでしょ

だって俺、一応これでも狼ですからね

まあ狩猟はほとんどせず

残飯ばかり漁ってる、しがない奴ですけど

そんな木の枝で殴られたぐらいじゃ

気絶しませんよ

ほら、ちょっとこれ見てくださいよ

頭、陥没してるでしょ

今朝、病院行ってきたんですけど

全治、二ヶ月ですって

もう本当に勘弁して欲しいですよ

大体ね、最近の狼って

あんまり人を襲わないですよ

そんなリスクの高い真似

あえてしませんよ

どっちか言うと共存の道を選びたいって思ってる方なんで

それなのに後ろからガツンですよ

今朝のスポーツ新聞とか見て驚きましたよ

何が『赤ずきん、あっぱれ!』なんだって

何が『三十年ぶりの快挙』なんだって

ちょっと見た目が、かわいけりゃ

何をしても許されるのかって!

ほら金賢姫でしたっけ

大韓航空機爆破事件のときも

同情の声が結構あったじゃないですか?

まあ大衆なんて

そんな浅い物の見方しかできないでしょうけどね

でもやっぱり納得できないですよ

これね、日本人の悪いところだと思うんですよ

判官びいきって言うんですか?

古くは源義経からそうじゃないですか?

もっと本質を見極めて欲しいですよ

何か、ただ悲しいですね

あっちょっとまた頭痛がしてきたんで

この辺りでいいですか?

ああ、謝礼いただけるんですね

すいません

治療費に使わせていただきます

こんな話で良かったんですかね?

ああ、そうっすか

こちらこそ、どうも

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赤ずきんに聞きました

あっ昨日の話?

うん、別にいいけどさ

なんかあ

学校から帰ってきたらあ

ママが玄関に立っててえ

おばあちゃんのお見舞いに行けって言うのね

私今日、ホントだったら彼氏とデートするはずだったんだけどお

昨日、ふられちゃったのね

私としてはむしろ振ってやったと思ってるんだけどお

まあ、でも昨日の今日だしい

家にいたら思い出しちゃうんでえ

暇つぶしにはちょうどいいって感じでえ

お見舞い行くことにしたんだあ

そしたらさあ

森の中歩いてたらあ

なんかガサゴソ音がするわけ

もしかして、別れた彼氏かなあ

なんて期待したんだけどお

結局出てきたのは狼だったわけ

それでえ、どこ行くんだって言うから

おばあちゃんちって言ったら

フムフムとか言いながら、歩き出したわけ

私ピーンときちゃってえ

多分、おばあちゃん食べる気だなって

なんか出てきた時は、びびっちゃったけどお

殺られる前に殺れって言うのが

ママの教えだし

このままじゃあ、おばあちゃん危ないじゃん?

だからさあ

地面に落ちていた木の枝で

後ろから殴ってやったの

あんがい狼のやつ、あっけなくて

一発で倒れたんだけどお

私って石橋を叩いて渡るって言うの?

あっ前の彼氏の名前、石橋って言ったんだけどお

むしろ、そんなことはどうでも良くてえ

念のため、後頭部を何発も殴ったら

泡吹いちゃってえ

もう大丈夫だって安心したの

それで、おばちゃんのおうちにお見舞いに行ったんだけどお

やっぱり狼を倒すとテンション上がってんじゃん

だから、知子にメールしたのね

そしたら、知子って口が軽いって言うのかなあ

いろんな人に言っちゃってえ

私がおばあちゃんの家を出たら

新聞記者とかがワンサカ押し寄せてたの

正直、びっくりしたんだけどお

あっ言ってなかったけどお

私、ちょっとだけ援交やってたからさあ

それがバレてないかヒヤヒヤもんだったのよ

でも次の日の新聞は

ほとんど私が一面でえ

『赤ずきん、あっぱれ!』とか『狼なんか怖くない』とかね

トップ扱いなわけ

特に東スポの扱いがすごくてえ

ママなんて五部ぐらい買ってたわ

あっインタビューってこんな感じで良かったの?

ふーん

あっありがとう

五万円もくれるんだ!

おじさん、親切だね

援交の相場って大体、二、三万なんだ

しゃべるだけでこんなにもらえるって

ありえないって感じ?

明日、マルキュー行って服買ってこよっと

はい、じゃあもういいかな

ありがとね

お疲れした

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ヒステリック卑弥呼

うーわ、また卑弥呼ヒステリー起こしてるやん

やめろって

なんでお前

腹立ったら俺の土器壊しに来るねん

向こういけや

これ売りもんやねん

あーあ、せっかく時間をかけて作ったのにやな

粉々やないか

ええ加減にせえよ、お前

女王やから言うて許されると思うなや

いや、最近,皺が増えてきてとか言われてもやな

それは俺にはどうすることもでけへんやろ?

俺は土器作るしか能のない、しがない職人や

そこんとこよろしく

せやから、はよ家、帰れよ

いやだからな

更年期障害とか言われてもな

俺にはどうもできひんねん

医者行け、医者

保険証持ってへんとか言われても、知らんがな

人が話してるのに全く聞いてないし

また土器壊し始めたがな

やめろってお前

それ売りもんや言うてるやろ

な、なんやねんその顔は……

寂しいの、とか言われてもな

えっ今晩泊まっていってええかって?

いきなりそんな事言われてもやな

俺もこの前、嫁はん亡くしたとこやしな

でも今日中にあと百個は土器作らんとあかんしなあ

どうしよかな、間に合うかな

弱ったなあ

なんか考えたらドキドキしてきたわ

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春はあけぼの

ああ疲れた、はよ風呂入って寝よ

ん? なんやろか

ドアの前になんかおるぞ

うーわ、最悪やん

曙やん

ドアの前に曙太郎って

これダメですよ

なんでお前人んちの前で死んでるねん

どけって

大体どうやって入ってきてん

ここオートロックやぞ

どけよ

おい太郎

どけって

家でゆっくりしたいんねん

せっかく買ってきたビールがぬるくなるやろが

曙って

どけよ

なあ

どけって

なんでお前どいてくれへんねん

なあ、なあって

曙って

聞こえてんねやろ

ああ、そうか

こいつ死んでたんやった、ごめん、ごめん

すっかり忘れてたわ、すいませんでした

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親父の寝顔

母に頼まれ、いやいや父の寝室に向かった

父の寝起きが悪いのは今始まった事ではない

無傷でいられるだろうか

嫌な予感を覚えながら、ドアノブを回す

部屋に入るのは何年ぶりだろう

小学校の頃に入ったのが最後だった気がする

ゆっくりと足を踏み出す

スー、スーという寝息が聞こえてきた

右手を伸ばし壁のスイッチに触れると

室内が明るくなった

布団をめくると

女子高生の格好をしたまま寝入る、親父の姿があった

相も変わらない、倒錯的な趣味

目をそむけたくなる

と言いたいところだが、なぜか俺はひきつけられた

親父の寝顔を見て

「なかなか、かわいいじゃないか……」

不覚にもそんな事を思ってしまった

胸のドキドキが止まらない

どうやら俺は親父に惚れてしまったらしい

たくましいその肩に触れ、優しく親父を起こした俺は

耳元でそっと呟いた

「付き合って下さい」

すぐさま拳が飛んできた

鼻骨の折れる音がした後、激烈な痛みを覚えた

だが俺の気持ちは変わらなかった

いやむしろ先ほどよりも燃え上がっていた

すぐに上手くいかなくてもいい

密かに心に誓った

いつか親父の首を縦に振らせてみせると

俺は鼻血を拭いながら、窓の向こうに目をやった

一羽のツバメが軽やかに飛んでいた

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先手必勝!

ああ、やっと来よったで

赤ずきんのやつ、遅いねん

ほんまにどんだけ待たせたら

気が済むねんな

こっちは餓死しそうなくらい

腹へっとんねん

あれが赤ずきんか……

うーわ、めっちゃブサイクやん

鼻、上向いてるやん

うーわ、引くわ~

ああいうルックス引いてまうわ

なんやねん

腹立つわ

三日待って

やっとやって来たんがブサイクって

しかもな

しかもやで

狼である俺よりも

あいつの方が口でかいってどういう事?

耳まで裂けてるがな

あっしまった

目ぇおおてもた

うーわ、ぐいぐいこっち来てるし

なんやねん

やめろや

耳引っ張んなや

痛いやんけ

耳急所やねん

いや、僕ちゃいますよ

ブサイクとか言うてないっすよ

ちょ、部活あるんで離して下さいよ

遅れたら先輩にどやされるんですよ

縦社会なんですよ

赤ずきん

赤ずきんさん

お願いします

離して下さい

耳、痛いです

頼みます

めっちゃ耳痛いんです

離して下さい

赤ずきんさん

耳ギュウッってやらんといて下さい

ほんまに痛いんです

赤ずきんさん?

はー、やっと離してくれたがな

よっしゃ、あいつ向こう行ったなあ

と思ったら

すごい勢いでこっち戻ってきやがった

うーわ、あいつ猟銃持っとるやん

撃つなあ!

あっぶなあ

あと一センチずれたらアウトやで

誰や赤ずきんに銃、渡したんわ

逮捕せい、逮捕

なんや香ばしい匂いがすると思ったら

毛ぇ焦げてもうとるがな

あれっ、反対側からばあさん出てきたで

なんでお前も銃持ってるねん

挟み撃ちかいな

あ、あかん

腹打たれてもうたなあ

完全に貫通してるし……

油断したわ

まさか食べる前にやられるとは

思わんかったね

先手必勝とはこの事やで

でもこれだけは言うとくぞ

肉食動物の肉は硬くてまずい

ああ、こんだけ言うても食べるんやね

うーわ、知らん間に、皮、裂かれてるし

お前らはあれか?
食いしん坊か?
頷いてどうすんねん

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人生最大の目標(創作物)

ああ、今日ええ天気やなあ

お日さんがよう照ってるわ

あれっ誰かこっち向かって来てる

あれはもしや……

うーわ、まだひ孫遊びに来てるやん

だるいわ、あいつ

なんでそんな頻繁に遊びに来んねん

わし九十八やで

キャッチボールとかできひんちゅうねん

実の親に遊んでもらえ

共働きとか言い訳にならんぞ

こっちは命かかっとんねん

もう毎日のように孫とかひ孫とか、知らんおっさんが

家、来るから嫌になるわ

このまま行くとわしの最大の目標である

百歳超えがでけへんようなるかもしれんな

そうなる前に手ぇ打たな

どうしよかな

居留守使おっか

せやな、それしかないわな

よし、今日は居留守作戦で行こう

うーわ、ひ孫のやつ窓から勝手に入って来てるやん

ベル鳴らせよ、付いてんねんから

えっなんやてDSしたい?

嫌じゃ、そんなもん

わし近くのもん見えへんの知ってるやろ!

あーあ、泣き出しよったで

ほんまに面倒くさいなあ

うーわ、窓から知らんおっさん入ってきてるし

もうほんまに面倒くさいわ

警察に電話するのも面倒くさい

しかも手に包丁持ってるやん

こりゃ、ひ孫を盾に戦うしかないなあ

うーわ、ひ孫おらへんやん

いつの間にか逃げ出してるやん、面倒くさー

生きるのってほんまに面倒くさいわ

面倒くさい事だらけやね

せやけど、よう、この年まで生きてきたと思うわ

自分で自分を褒めてやりたいですよ

クソッ、ええ事言うてるのに

誰も聞いてへんし

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桃から生まれて、すいません

じいさん

じいさんや

ちょっと来てくれへんかいな

あのなあ

今日なあ

川で洗濯してたらなあ

でっかい桃が流れてきたんやんかあ

私、腰痛持ちやから

家まで持ってくんの大変やったけど

まあ何とか運んできたわけよ

ほんでさっきナタで割ったらやなあ

あんまり切れ味良すぎて

赤ん坊が真っ二つ

せやけどそっからがすごいがな

時間とともに

欠けていた方の半身ができてきてやな

二人に増えたんやがな

更に倍にしたろ思てな

また左右に真っ二つにしたんや、二人とも

ほんならまた再生しよったがな

四人になったわ

今度、八人にするから見ときや

こうやって固定してやな

上からナタを振り下ろす

振り下ろす

振り下ろす

振り下ろす!

上手いもんやろ?

時間とともに再生してやな

時間とともに……

時間と……

時間……

じか……

じ……

うーわ、もうなんなん

なんで爺さん見てたら再生せえへんの?

恥ずかしがりなや

さっきみたいに再生したらええがな

このままやったら私が殺人鬼と思われるやんか

ただでさえ最近、近所でヤマンバとか言うあだ名がつけられてるのにやな

ちょっと爺さん、どこ行くの?

もうちょっと時間をちょうだいな

あと少ししたら再生するから

えっ酒買いにいくの?

ほんなら行っといで

多分、爺さん見てると

この子ら恥ずかしがって再生しよらへん

はい、行ってらっしゃい

よっしゃ、邪魔者は消えたで

はい、再生!

恥ずかしがりなや

見てんの私だけやがな

再生スタート!

はーあ、全然あかんやん

ピクリとも動かへんやん

しゃあないなあ

この子ら明日の晩のおかずにでも

するしかないかあ

はあ、残念やなあ

あと三回はいける思たのになあ

これっジョンッ!

つまみぐいしな

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ただいま親父、通勤中

ああ、久しぶりに早く家出たなあ

やっぱり、ええなあ

こうやってゆっくり登校できんのって

遅刻寸前ばっかりやったもんなあ

ちょっとバタバタしすぎてたなあ

よしっ決めた

これからは、早めに起きて学校へ行こう

あれっ、向こう側の道路歩いてんのって親父やんなあ

へー、この道から駅まで行ってたんや

知らんかったわ

あっ今、足くじいたよなあ

うーわ、めっちゃキョロキョロしてるやん

また、歩き出した

さも何もなかったかのような顔しとるなあ

でも完全にばれてるやん

思いっきりくじいたやん

ここまでグキッて音がしそうなくらいの

ぐねり方やったで

ほらほら、歩き方おかしいやん

明らかに左足、負傷してますやん

無理すなよ

そんなにすぐに歩き出さんでええがな

しかし、顔からえらい脂汗出とるなあ

相当、痛いんかなあ

あっ止まった

親父止まった

ちょっと休憩すんのかなあ

あっあっ地面に倒れこんだがな

どないしてん

両手を地面につけてなんか呟いてるなあ

あーあ、とうとう泣き出しよったで

やめてくれよ、格好の悪い

同級生に見られたらどうすんねんなあ

地面を拳で叩くなよ

足ぐねったんがそんなに悔しいんかいな

うーわ、もう号泣やん

人目もはばからず泣きじゃくってるやん

家ではあんなに威張ってるのになあ

やっぱり虚勢やったんか

よっしゃ、ええ機会やから

こっそり写メ撮っとこ

ほんでなんかあったら

これ見せておどしたろ

にひひひひ

パシャリと……

あー、ええ写真撮れた

両手で地面を叩きながら泣き叫んでるところが撮れたで

しかし、これ人に見せたら

この人の身に何があったんですか?って絶対聞かれるやろうなあ

まさか、足くじいただけとは夢にも思わんやろうな

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肌色の廊下

なんでやドア開かへんやんけ

クッソー、もう家出なあかんのに

このままやったら遅刻してまうぞ

ほんま、どないなってんねん

ああ、クッソー

全然開かへん

おかしいな

鍵は開いてるよな?

うん、開いてる

あっちょっと開いた

なんやろ?

隙間から肌色の物体が見えたけど

ああ、段々ドアが開いてきた

ちょっとずつやけど

これは何とかなるかもしれん

よっしゃー、完全に開いた

うーわ、廊下、力士だらけやん

しかも全員死んでるし

何で裸やねん

何があったんや

何で人の家のマンションの廊下まで来て

全裸で死ななあかんねん

もうええわ、踏んで行こ

会社遅れるからな

踏むしかないわ

うーわ、めっちゃ柔らかいやん

結構弾むなあ

トランポリンみたいや

なんや、朝からテンション上がってきたなあ

あれっ……

今、なんか人のうめき声が

うーわ、こいつだけ生きとったやん

めっちゃ睨んでるし

いや、そんな顔されてもやな

勝手に廊下で寝てるやつの方が悪いし

やめろや

足、掴むなや

離せや

会社遅れるやんけ

うーわ、めっちゃ力強いし

あっエレベーターのドアが……

誰でもええから助けてくれ

おお、親方らしき人が

ついに力士の死骸の回収にって

帰るんかい!

何しに来たんや

こいつ、さっきから全然足離さへんぞ

うーわ

足、血の気なくなってきてるやん

なんか冷たくなってるやん

しゃあないなあ

先に電話しとくか

あっもしもし課長ですか

ちょっと今日、遅れます

なんかね

力士が離さへんのです

いや、足を掴まれてね

えっ会社の廊下も力士だらけ?

ほんまですか

日本はいったい、どうなってんねや

こんだけ力士が死んでたら

国技なくなるっちゅうねん

それはさておき

会社、休も

だってこいつ離さへんねんもん

しかも全く話さへんし

なんか物言えよ

なにが「ごっつあんです」やねん

お前、あれやろ?

「ごっつあんです」と「どすこい」以外に言葉知らんやろ

うーわ、めっちゃ頷いてるし

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うるう年ベイビー

ああ、やっと外出れた

十月十日長かったで腹ん中は

ふー、しゃばの空気は美味いなあ

ところで今日は何日や?

自分の誕生日ぐらいは覚えとかんとな

ええっとカレンダー、カレンダー

あった

うーわ、最悪やん

今日2月29日やん

よりによって

なんでうるう年のこの日に

生まれてくるかなあ

確率で言うと1460分の1ですよ

絶対あれやで

誕生日プレゼントなんか4年に1回しかもらわれへんで

手口わかってんねん

なんかいきなりやる気なくしたわ

もういやや

胎内戻ろ

うーわ、最悪やん

産道の中にめっちゃ兄弟おるやん

何人おんねん

1,2,3,4,5……

なんで六つ子やねん

わしゃ、おそまつ君か!

絶対、愛情も6分の1やで

ほんまに、どんだけついてないねんな

いたっ!

誰じゃ今、顔蹴ったやつは!

お前か?

逆子で生まれたから言うて

兄貴の顔蹴るやつがあるか

もう怒った

気分悪い

わしゃ、どっか行く

なんやねん

引きとめんなや

男が一度決めたことは二度と覆ら……

なんや

へその緒切ってなかったんかいな

勘違いしたがな

恥ずかしいやんけ

しゃあないな

お産の手伝いでもしたろか

おーい、看護婦さんタオル持ってきてくれ

痛い痛い

なんやねんな

生まれたての人間の耳引っ張んなや

なんやて

今、看護婦言うたら怒られるんかいな

看護師って言わなあかんの

面倒くさいなあ

どうでもええやんけ、そんな事は

わし気分悪い

子宮に戻るわ

いたっまた蹴りやがったなあ

なんでお前らは長男を大事にせえへんねん

もっと儒教を勉強せえ

あーあ、今ので歯ぁ折れたわ

生えてへんけど歯ぁ折れた

ほんまにもう散々やで

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イラズンバ

ほんまに山の天候は気まぐれやで

あんだけ晴れる言うてたのになあ

ずぶぬれやで

おお、あっこに、ええ感じの横穴あるなあ

よっしゃ、あそこで雨宿りしよ

結構、横穴続いてるなあ

なにがあんのか気になるなあ

ちょっと奥に進んでみよか

あれっなんかミャーミャー言うとるなあ

あっこれは虎の子やなあ

なんで日本に虎の子が……

せやけどかわいらしいなあ

ミャーミャー言うとるなあ

んっまてよ

虎の子がおるっちゅうことは

ここコケツちゃうん

うーわ、やばいなあ

めっちゃ奥からグルグルって聞こえてくるし

絶対コケツやん

コケツってわかってたら

絶対入らへんかってんけどなあ

コケツかあ、しもたなあ

しくったなあ

来たで来たで

親分登場やで

やっぱり生で見るとでかいなあ

猫科とは思えへんなあ

いや、違うがな

別にいじめてるわけちゃうがな

ちょっとな雨宿りをさせてもらおうと

わかったがな

出ていったらええんやろ

うーわ、最悪や入り口からぞろぞろと

虎が入ってきたで

全部、大人やがな

だいたいおかしいがな

虎っていうのは集団で生活せえへんのと違うんか!

それを君らは習性を無視し

勝手に日本の洞窟に住み

そして繁殖し!

いやいや、言うてみただけですやん

ちょっとどいておくんなはれ

今出ていきますさかいに

ああ、爪を立てなはんな

そうや、ええこと教えましょか?

わし、阪神ファンでんねん

せやから虎は大好き

こんなところで

ほんまもんの虎さんに会えると思わんかったがな

ああ、こんだけ言うてもあかんねんな

せやから爪を立てるな言うてるやろ

痛いがな

ほら、これ絶対に跡が残るで

うーわ、なんか知らんけど

ライオン入ってきたし

ほんまにここコケツかいな

ライオン入れたらあかんで

なんたって百獣の王やで

こうなったら、やけくそや

オケツ出したんねん

イタッ!

また爪立てやがったなあ

コケツでオケツに爪立てられるってこれ

どないやねんな

あーあ、完全に囲まれたし

ライオンめっちゃこっち見てるし

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疲れすぎた少年

パトラッシュ僕もう疲れたよ

……とっても眠いんだ

パトラッシュ

パトラッシュ?

パト……

うーわ、最悪や

あいつ逃げようとしてるやん

ちょっと、お前待てや!

ここまで来たんやから一緒に死のうぜ

こんなこと言いたくないけど

最終回ですよ、これ

かなりの視聴率ですよ

みんなが泣きたがってるのにやな

お前だけどっか行ったら

興ざめですよ

犬が猫みたいな行動とったらだめですよ

一緒に死んで、くださいよ

パトラッシュ

パトラッシュ

パトラーッシュ!

クッソー、完全に出て行きよったがな

往生際が悪いな

外も雪降っとるがな

いまさら外に出ても一緒やて

結局は死が待ってるんですよ

パトラッシュ

パトラーッシュ!

やっぱり戻ってこおへんか

なんや、叫んだら眠けさめてしもたわ

これ、本番終了後が怖いで

抗議の電話、ジャンジャン来てるはずや

今度はもっと忠実な犬、連れてこんとな

何がパトラッシュやねんな

よう考えたら変な名前やで

今度は日本の犬、使お

秋田犬とかやったら

実直で裏切りそうにないしなあ

ほんまにだるいわ、あいつ

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天ぷら食いすぎ

家康さまー

家康さまー

呼んでも返事せえへんがな

どないなってるねんな

ちょっと失礼しまっせ

うーわ、なにこれ……

家康さま、白目むいてるやん

ええっと脈はあるかなっと

……ないがな

脈あらへんがな

つめとーなっとるがな

完全に家康、死んでるやん

天ぷらの食いすぎで死んでますやん

しかし天ぷら何本食べるねんな

口から尻尾ニョキー出てるやん

まてよ、ドッキリの可能性もあるなあ

もうちょっと確認が必要か……

家康、家康って

おい家康て

お前ほんまに死んでんのか?

家康、家康

全然、反応ないなあ

死んでるみたいやなあ

しかし天ぷらの食いすぎで死ぬて

徳川家康ともあろうお方が情けないなあ

何が征夷大将軍やねん

そや、記念に写メ撮っとこ

もしかして、あれちゃうん?

これ保存しといたら

後々に教科書とか載るんちゃうん?

うーわ、それ考えたらなんかテンション上がってきた

もう一枚撮っとこ

パシャッと……

おおっびっくりした

みんないつからそこおってんな

半蔵もいるんやったらいう言うてくれんと……

気配消すのが得意なんはわかるけどな

なあ、これ見て

おもろない?

家康、天ぷら喉に詰まらせて死んでるねんで

こっそり夜中に一人で食べるからこんな目に合うねん

罰が当たったんや

ちょっとええ記念やから

集合写真撮ろか?

そうそう、家康をバックに

ほんなら一枚目は俺が撮るわ

はーい、みんな笑って

あっあかんわ

秀忠、お前今、目ぇつぶったやろ?

ほんならもっぺんいくで

はい、チーズ!

よしっええのが撮れた

額縁に入れて飾っとこ

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帰路にて

あっあぶな

寝過ごすとこやったわ

この駅で終点やねんから

誰か起こしてくれよなあ

ほんまに冷たいで

あっそうや

携帯でブログチェックしよ

最近、コメントとかアクセス数増えてきたし

これを見るのが楽しみで……

えっえっ?

なにこれ……

うーわ、最悪やん

ブログ炎上してるやん

やっぱりアイドル叩いたんがあかんかったか

ファンを怒らせてもうたかあ

あーあ、えらいことになってるがな

コメント数、8400て

ありえへんやろ?

しゃあないなあ

こうなったら閉鎖するしかないかあ

ほんでまた別のブログ作ろ

あーあ、せっかく軌道に乗ってきたとこやったのになあ

あれっなんや、騒がしいなあ

これ俺の家の方ちゃんかいな?

なんや、心配やがな

ちょっと駆け足で……

うーわ、最悪やん

家、炎上してるやん

せっかくローン組んだのに

三十五年やで、三十五年

あーあ、火災保険入っとくべきやった

誰やねん、火ぃつけたんは

それとも嫁はんのやつ

火つけっぱなしでどっか行ったんちゃうんかいな?

ちょっと、どいてどいて

ここ俺の家やねん

うーわ、嫁はん炎上してるやん

何べんも口説いて五年付き合って

やっと結婚までこぎつけたのに

これやったら他の女にしとくべきやったか

うわっびっくりした

ジョンやないか

お前も炎上してるんか?

お前、火に包まれて熱くないんか

何が散歩やねん

こんなときに散歩行ってる場合か?

ハフハフ言うなって、なんでハフハフ言うねん

せやけどお前なんで平気なんや?

ファイヤードッグ、ジョンやなあ

ちょ、ちょっとお前

こっち来んなって

なんやねん

なんでこんなときに限って

人懐っこいねん

熱い、熱い

こらっ火が燃え移るがな

向こう行け、ジョン!

散歩とか行ってる場合やないねん

ジョン、ステイ

ステイ、ジョン!

もう、全然言うこと聞かへんし……しつけ、失敗したがな

うーわ、もう最悪や、俺、炎上してるやん

消防隊員、無視しよるし

絶対あいつら気づいとるで

しゃあないなあ、ジョン

散歩行こ、散歩

ちょうど駅前に24時間営業中のスーパーできたから

そこでサツマイモ買って

公園で焼きいもでもしようやないか

でも問題はやな

スーパーに入れてもらえるかどうかやな?

その辺、お前はどう思う?

ワンやないがな、ワンや、何がワンやねん

ほな、そろそろ行こか

こいつ、またハフハフ言うてるし

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シューマイの叫び

ちょー、待ってや

何で俺のこと何回も温めるん?

さっきもチンしたやん

完全に出すの忘れてたやろ

あのな

自分でこんなこと言いたくないけどな

俺、シューマイやで

中国生まれやで

北京ではシャオマイって言われてるんやで

まあそんな話はどうでもええねん

お願いやから、一回で決めて

箱にちゃんと書いてあるやろ?

600ワットで1分半て

それを君

何度も何度も……

そんだけチンされたらカチカチなりますよ、そりゃ

多分、今の俺はダイヤモンドよりも硬いで

カッチカチやで

なにが「そんなアホな」やねん

わかってるがな

俺もほんまはわかってるねん

わかってて言うてるねん

実際、そこまで硬くないよ

でもニュアンスやん

自分、関西人やろ?

ほんならそれぐらいわかって下さいよ

あーあ、結局捨てるんですか?

食べずに私を捨てるんですか?

それがあなたのやり方ですか?

あのな、これ知ってる?

日本の残飯率って世界一やねんで

こんなことしてる間にもアフリカでは恵まれない子どもが……

あーあ、こんだけ言うても捨てるんやね

あのな、これだけは言うとくぞ

夜道のひとり歩きには注意せえよ

見知らぬ中国人が襲ってくるかもしれんぞー

そいつの名前はシュー・マイかもしれへんぞー

知らんぞー

知らんぞー

中国人には気をつけえよ

日本人よりは強いぞ

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ひつこい秀吉

あれっ

納屋の扉が開きっぱなしになってるがな

誰やねんな

農作業のあとはきっちり閉めんと

あっ中に人おるなあ

誰やろ?

猿でも紛れ込んだんか?

あれっ猿ちゃうわ

秀吉やん

あいつ、また来てるやん

もう帰れよ、お前

何で毎日、来るねんな

いや、「刀狩りじゃ!」言われてもな

この前渡したやつで全部やねんて

なんぼ探してもあるかいな

ないもんはないねん

帰れよ、秀吉

ウキッやないがな

なんでそんなうち来るねん

たいがい暇やなあ、お前も

もう城帰れって

お前、噂やと、きれいな女いっぱいかっさらってきて

城に住まわせてるらしいやないか?

そっち帰ったらええがな

なんでそんなに、うちにこだわるんかなあ

いや、だからな

もう刀は無いねん

あの一本で最後やって

わかってくれよ、秀吉

しゃあないなあ

寧々に電話するしかないか

ピポパポパと……

あっ寧々

俺、俺

今、大丈夫?

あんなあ

秀吉、また家に来てるんやんかあ

せやから悪いけど

迎えにきたってくれへんかなあ

多分、寧々の言うことやったら聞くと思うわ

うん、ごめんな

待ってるわ

ふー毎日、大変やで

よしっ気分転換にDSでもやるとするか

ええドラクエ、ドラクエと……

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脳フューチャー

おい、待て!

お前らどこ行くねん

人んちのガラス割っといてトンズラかい?

野球はもっと広いとこでせえや

学校のグランドとかいろいろあるやろ

見てみ、これ?

誰が打ったんか知らんけどやな

ボール当たってわしの頭、へこんどるがな

なに笑っとんねん

人の頭がへこんでるのがそんなにおかしいんか?

「はい」やあるかい!

元気よく返事せんでええねん

よう見てみこれ

へこんだ穴から脳みそ出てるやろ

脳出るって、よっぽどやで

出るとこ出たら賠償問題なるで

オーノーやで

なんで今度は笑わへんねん

脳出てんねんぞ

なんで笑わへんねん

なにを引いとんねん

なんや脳みそ見るの初めてか?

あーあ、全員、気絶してもうたがな

よし、今のうちにドアを閉めてと

さあ、これで大丈夫や

準備は整った

脳みそ入れ替えよか

どうせやったら頭のええやつがいいなあ

ええっとどれにしよっかな

あっこいつ、賢そうやな

よし、こいつにしよ

おかあちゃーん

刺身包丁とトンカチ持ってきて

あとゴミ袋と新聞紙も忘れんといてな

早めに頼むで、早めに

目ぇ覚まさんうちにね

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便座を下ろし忘れた男

便意、もよおすわな

慌ててマンション帰るわな

トイレ入るわな

便座上げたままなってるの忘れて座るわな

スッポーンってそのまま、はまってまうわな

ジャストフィットやわな

まあ、抜けへんわな

叫ぶわな

助けこうへんわな

うちのマンション防音設備完璧やわな

家賃もそこそこするわな

わし独身やわな

叫ぶわな

シーンてしてるわな

携帯、カバンの中やわな

カバンは玄関に置いてるわな

取りにいけへんわな

そこで初めて気づくんや

これは助からんぞって

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田中さん転落死

うーわ、田中さん転落死してるやん

弱ったなあ

今日、生ごみの日ちゃうねんけどなあ

燃えるゴミの日なんやけどなあ

どうしよかな

困ったなあ

掃除婦なんかならんかったら良かったな

ハゲタカでも呼ぼかな

あっ勘違いしたらあれやから

念のため説明しとくけどな

ハゲタカ言うても

外資系ファンドのこととちゃうよ

私これでも愛国心が旺盛な方やからね

だてに戦争体験してないから

あっいらんこと言うてる間にゴミ収集車やってきた

すんません、これ燃えるゴミでもいけますやろか

あっほんまに?

いけるんや、何でも聞いてみるもんやな

ほな、私もゴミの車に入れるの手伝いますわ

ちょっと足持ってもろてよろしいか?

せーの、はっ

重たい重たい、一回置きましょか?

えっ! このまま放り込む?

無茶言うな

ほな、いきまっせ

せーのっはっ

ふー、重たかった

手ぇ合わせとかんとなあ

田中さん、安らかにお眠り下さい

あれっ……うーわ、車の後ろから声が聞こえるで

田中さん、生きてたんかいな

うーわ、どうしよう

なあ、おっちゃん、どうする?

おっちゃんて

なんでにやにや笑ってるねんな

もうはよ車、走らせてんか!

ふー、やっと行ったがな

あれっ車から手だけ出てるわ

やっぱり助け求めてるんやろか

やるなあ、田中

最後まであきらめへんもんなあ

一応、振り返しとくか?

向こうには見えへんけどな

ほな、田中さん、今度いつ会えるかわからへんけど

多分、会えへんと思うけど

お元気でー

それにしても凄い生命力やな

私も見習わんとなあ

八十越えたから言うて枯れてる場合やないなあ

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帰宅後の世界

マンション着くわな

ドア開けるわな

仕事で疲れてるわな

酒飲んだ後、ラーメン食べてるわな

腹はいっぱいや

風呂に入るの面倒くさいわな

パジャマに着替えて寝室行くわな

布団めくると嫁はん寝てるわな

嫁はんの服脱がすわな

パンツ脱がすわな

まあ、正直ギンギンやわな

酔ってるせいか

嫁はん、いつもよりきれいに見えるわな

辛抱たまらんわな

挿入するわな

嫁はん、目ぇ覚ますわな

悲鳴上げるわな

嫁はんの顔、見るわな

そこでようやく気づくんや

部屋、間違えたって

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宴の後

まずは部長が挨拶するわな

「今日は無礼講やから、先輩後輩とか忘れて

気楽にいきましょう」

わし、それ鵜呑みにするわな

わし、平社員やわ

部長と同期やけど、平社員やわ

最初は隅っこで小さなってけれど

だんだんと酒がすすむにつれて

ええ気分になるわな

できあがってくるわな

ほんで部長の隣に座ってやな

いろいろ話するわな

昔話に花が咲いた後に

卑猥な話で盛り上がって

部長がなんか下品なボケかましたから

ヘッドロックするわな

頭ペチペチ叩くわな

なんかおかしい

違和感あるなと思うから

ヘッドロックを外すわな

ほんなら部長のふさふさの毛髪だけが

手元に残るわな

ヅラやったわけやな

ほんで初めて気づくねん

大変なことしてしもたって

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田中部長に膝かっくん

高木係長の左遷が決定したらしい

田中部長に膝かっくんをしたのが原因ではないか?

そんな噂が真しやかに囁かれている

田中部長を後ろから見ていると

ほとんど全員が膝かっくんしたいという誘惑に駆られてしまう

だがこれは罠なのだ

過去に何人の人間が部長に膝かっくんをして

消えていっただろうか

部長は迅速だ

膝かっくんをされた一時間後には

役職の人間を集め

『膝かっくん、されちゃったぜ会議』を始める

そして自分に膝かっくんをした人間の処遇を

ただちに決める

部長は言う

社会人にもなって、膝かっくんなどと

非常に子供じみた行いをする人間など

わが社に不要なのではないかと

そうやって自分を追い抜かしそうな人材を

巧妙に消し去ってきたのだ

かく言う私も何度その誘惑と戦ってきただろうか?

ああ、こうやってエレベーターを待っている今でさえ

部長は私を誘っている

チラチラとこちらを気にしながら

膝かっくんの誘いを続ける

ああ、やばい

自制心が働かない

このままでは膝かっくんをしてしまいそうだ

誰か私を止めてくれ

ああ、私の膝が部長の膝裏に……

ふー、タイミングよくエレベーターが来たので助かった

良かった、これで左遷は免れた、膝かっくんと……

し、しまった、油断した、ついついやってしまった

勤労三十二年、まじめに働き続けた私が

こんなことで会社を追われることになるとは

ああ、部長がこちらを振り向き笑っている

それにしても、なんて嫌な笑みなのだろう

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若ハゲ待望論

今日も私の元に津々浦々から

その地方を代表するたくさんの若ハゲがやってくる

だがほとんどの若ハゲは仕事を与えても

物に出来ずに田舎へと帰っていく

友人、知人は私に言う

「なぜにそんなに若ハゲにこだわるのか?

毛のある有能な人材はいくらでもいるし

年をとった禿げでも優秀な人は五万といるのに……」

彼らの言うことはわかる

正論だと思う

ただ私の会社がここまで大きくなったのは

間違いなく若ハゲのおかげだし

私も二十代の頃は若ハゲだったからに他ならない

毛のあるやつに負けてたまるか

その一念が吹けば飛ぶような会社を

上場できるまでに押し上げたのだ

若ハゲなくして、今の私はない

だからこそ今でも私は若ハゲの可能性

そうポッシビリティオブ若ハゲを強く信じている

若いのに禿げている

そんな人間に肩入れしたくなるのは当然ではないか

人情ではないか

繰り返しになるが

若いのに禿げているのだ

カルマを背負って生まれてきたに違いない

そんな人間を元祖若ハゲ協同組合、二代目書記長である、この私が

見捨てられるわけないではないか

ああ、どこかにいないものか?

世間の価値観そのものを

ガラッと変えてしまうような若ハゲが

そんな若ハゲの出現を信じつつ

今日も私はデスクに向かう

左隣に栃木出身の若ハゲ(田中くん)を立たせながら

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敵は本能寺にあり?

何が敵は本能寺にありやねん

引くわ

その発言ないわ

相手、信長やで

仮りにな

仮りにやで

信長倒したとしようや

せやけどすぐにやられるって

秀吉あたりが黙ってへんて

うーわ、また言うたやん

また「本能寺にあり!」言うたやん

あいつ言いたいだけやん

誰か注意したれよ

光秀、孤立してるんちゃうか

まあ上からの命令に逆らえへんのが

俺らのつらいところやけどね

まあ言われたからには行くけどね

なんか釈然とせえへんわ

自分と向き合ってへんのちゃうか?

お前の敵はお前自身やろ

それに気づけよ

自分と向き合えよ

えっいや何も言うてませんやん

ちょっと独り言をね

いや別にあなたの批判なんかしてませんよ

はよ、本能寺行きましょうよ

その発想はなかったわ

さすが光秀さん

さあ、はよ行きましょうや

思い立ったら吉日言いますやんか

なんやったら僕が先頭立ちましょうか

よし、任しとなはれ

みんな本能寺行くで

ついて来い!

ふぅ~勢いで言うてもうたがな

うーわ、めっちゃついてきたがな

こいつら多分何にも考えてへんな

ノリで来とるな

だってニヤニヤしてるもん

もうこれは後には引けへんで

やっぱり家康にしとくべきやったなあ

あのとき家康に仕えてたら運命変わってたもんなあ

やっぱり時代は徳川やで徳川

とりあえずあとで遺書書いとこ

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パンストを巡る攻防

パンストを破ってはいけません

なぜなら切なくなるのです

パンストは破るものではありません

履くものです

ですがあなたにとってのパンストは

履かせて破るものなのでしょう

あなたのその考えが残念で仕方ありません

パンスト会社に謝ってくださいな

ああ、私がこんなに言っているのにもかかわらず

あなたはそうして大量のパンストを買ってくるのです

利益が出る以上、パンスト会社も文句は言えません

そこを見越してパンスト買ってくる

あなたのずるがしこさに感服いたします

さあ、破りたいならお破りください

親の敵のように

ビリビリビリッとね

ああっひどいわ

やっぱり破るのね

でも愛しい人

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校長先生の捕まえ方

五年二組の教室に向かっていると

前から校長が歩いてきた

今日もその禿げ頭を容赦なく、てからせながら

目があった瞬間

なんともいえない嫌な表情を浮かべ逃げ出す校長

俺は笑いながら追い続けた

百四十センチにも満たない校長は、ちょこまかと素早い

だが俺は校内一、足が速い

本気を出すとすぐに追いついた

後ろから校長を抱きかかえると

ぐるぐると回し、まず三半規管を刺激した

そしてふらふらになった校長にコブラツイストをかけた

至福の瞬間である

この学校で一番偉い人間に

コブラツイストをかけている

そう思うと興奮してきた

ふと顔を上げると、担任の山田先生が立っていた

校長は「お前のクラスの生徒だろ。何とかしろよ」

という顔をしていたが

面倒が嫌いな山田先生は会釈をして通り過ぎた

無理もない

二十代半ばの小娘に俺のコブラツイストを解くことはできない

今度はアイアンクローをかけよう

そう思ったとき、ちょうどチャイムが鳴ったので校長を解放した

また明日の朝が楽しみである

出社拒否にならなければいいが

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転校初日

ペニスケースを付けた先生が正門の前に立っている

おはようございますと僕が挨拶すると

先生はにっこりと笑い

壁に立てかけていた黒い筒に手を伸ばした

蓋を取るとポンッという音がした

先生は筒からペニスケースを取り出すと

僕に後ろを向くように言った

言われた通りすると

先生は僕にペニスケースを付けてくれた

これで僕もこの学校の一員だ

私立山田ペニス小学校の生徒なんだ

新品のペニスケースを付けた僕は

なんだかそれが嬉しくて

校舎の方へと駆け出した

ふと運動場へ目をやると

ペニスケースを付けた生徒たちがサッカーをしていた

とてもやりにくそうだった

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部長VS課長

満を持して部長の右ストレートが放たれた

課長の目が、キラリと光る

さっと部長の懐に入ると

きれいにカウンターを合わせた

ぐらつく部長に課長のアッパーが襲い掛かる

吹っ飛び掃除用具入れで後頭部をぶつけ倒れる部長

だがすぐに立ち上がる

「いい加減、くたばりやがれ!」

課長の右フックが部長のテンプルを捕らえようとしたそのとき

部屋に社長が入ってきた

「やめんか! 昼休みはとっくに終わっとるぞ」

二人はぺこぺこと頭を下げると

恥ずかしそうに自分の席へ戻った

我が社のお昼休みは中々刺激的だ

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遅刻厳禁!

やっばいなあ

遅刻してもうたがな

絶対ただでは済まんぞ

大事な会議やのに

やばいなあ、やばいなあ

どないしよ

『ガチャ』

あれっ? なんや

みんな一列に並ばされてるやん

社長ハチマキ締めて立ってるやん

なんで手にオープンフィンガーグローブなんか付けてるねん?

うーわ、社長ごっつ怒ってるやん

顔、真っ赤やん

ハチマキになんか書いてあんなあ

『遅刻厳禁(笑)』てか

(笑)ってなんやねん

完全に怒ってるやん

そう言えば並ばされてるの

全員、昨日一緒に飲んでたやつやがな

あいつらみんな遅れたんかいな

あれっ隅の方で倒れてんの角田やんけ

あいつも遅刻したんか

うーわ、角田顔面ボッコボコやん

見るも無残とはこのことやで

唇取れかけてるがな

うーわ、端の奴から殴られてるやん

手加減なしですやん

あーあ、絶対俺も殴られるわ

もう、今日は帰ろ

殴られるん嫌やもん

よっしゃ、バレんように

そうっと……

ちょ、ちょっとなんですのん、社長

いや、トイレですやん

また戻ってきますやん

逃げるとかそんな話ちゃいますって

せやからね

ちょっと腹痛いからトイレに……

なんで人が話してるのにグローブ外すかなあ

うーわ、めっちゃ指鳴らしてるし

「貴様には死すら生ぬるい!」って?

あんたちょっと北斗の拳見すぎでっせ

グハッ

痛い、痛い

秘孔付かんといて

ひ、ひでぶ!

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フグ男のジレンマ

朝起きてから屁が止まらない

最初の犠牲者は飼い猫だった

枕元でぐったりとして動かない

間断なく放たれる我が屁を見て

これが原因かと呟いた

いつも一緒に寝ていたのが仇となった

そして次は母親だ

学校に遅れるよと起こしに来た瞬間

白眼を剥いて倒れた

母の倒れる音を聞いてやってきた父親も卒倒し

そしてじいちゃん、ばあちゃん

隣の青木さんまでが天に召された

昨日、三食さつまいもを食べたのがいけなかったのか

異臭騒ぎで駆けつけた警察も

部屋に入るなり気絶した

そしてついには自衛隊までも……

どうやらこの屁にはガスマスクなんて関係ないらしい

ああ、誰か俺の屁を止めてくれ

このままでは生き残りは俺一人になってしまう

頼むから止めてくれ

フグは自分の毒では死ねないのだよ

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さすらいのチンコ

ちょっとすいません

僕のチンコ拾ってもらっていいですか?

そこに落ちているヤツですわ

ほら、レジの横でシナシナってなっているヤツあるでしょ

先っちょが床にペタッてひっついてるやつですわ

あっすいません

いやー家帰ってから気ぃついんですわ

チンコないなって

で慌ててこのコンビニやって思い出してね

走ってきたわけなんやけど

いやー助かりました

チンコ助かりました

ちょっとトイレ借りてもよろしいかな?

チンコ付けたいんでねえ

色々すんませんなあ

あれっ

これ違うわ

これ人のチンコやわ

よう似てるけど僕のと違いますわ

こんなところにホクロないもん

ほら、店員さん見て見て

ここホクロついてますやろ?

僕こんなところにホクロないんですわ

あっすいません手ぇ握ってしもて

ちょっと興奮しすぎました

すいません、ほんまにすいません

良かったら、僕のチンコ吸いません?

あっごめんなさい

女の人にこんなん言うたらセクハラや言われるねえ

おっさんになるとあかんわ

ちょっと深呼吸します

スー……ハー

ところで他のチンコとかって落ちてなかったですよね

そうですよねえ

おかしいな

どこで落としたんやろ

あっやばい

小便したなってきた

こらはよチンコ探さんとやばいな

このままやと膀胱炎になるわ

ほな、失礼します

どうもお騒がせしました

チンコお騒がせしました

ええチンコ、チンコと

チンコはどこへ行った?

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美しき師弟愛

毎年、年末になると

弟子たちの前で真剣白刃取りを行う

衰えていないというのを見せるためである

それと照れくさいので口にはしないが

自分への挑戦でもある

「師匠、いきます!」

弟子の掛け声の数秒後

私の頭上へと刀が振り下ろされた

刃を両手で挟み込む

タイミングが命だ

少しでもずれると致命傷を負う

『ズバッ!』

あっあれっ

うーわ、失敗してるやん

オレ真っ二つになってるやん

完全に真ん中で真っ二つ

左右対称ですやん

やないなあ、内臓出てるなあ

ちょっと誰かセメダイン持ってきて

おい弟子

お前らどこ行くねん

なんでやねん

飯奢ったたりしたやんけ

なあ弟子て

どこ行くねん

カラオケとか言うなって

なあ弟子、弟子て

うーわ全員出て行ってもうたやん

あっ猫入ってきた

野良猫入ってきた

これは多分やばいですよ

うーわ、めっちゃ寄ってきたし

ミャアミャア言うとるなあ

なんかいつの間にか乞食入ってきてるし

割り箸、持ってめっちゃこっち見てるし

うーわ、内臓、箸でつままれてるし

ちょっとかゆいし

ワハハ、やめんかいアホ!

こそばいやんけ

ワハハ、ワハハ

ワハハハハ

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ああ、恥ずかしい

目が覚めると大便を漏らしていた

尻の辺りが非常に気持ち悪い

どうするべきか思案したが

寝たきりのこの体ではどうする事もできない

大人しく助けを呼ぶべきなのだろうか?

しかし、恥ずかしい

なぜなら漏らしたのは

一度や二度ではないからだ

また漏らしたの? 

という蔑みの目を向けられかねない

だからと言ってこのまま放置しておくのは

耐え難い苦しみである

ここは恥を忍んで人を呼ぼう

『オギャー、オギャー』

さっそく俺の泣き声を聞きつけて

母親が飛んできた

初めからこうすれば良かった

考えただけ損をした

何も恥ずかしがる必要はなかったのだ

なぜなら俺は

乳幼児なのだから

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窓の向こう

引越し先のマンションの窓から

民家が見下ろせる

小説を書くのに行き詰ると外の景色に目をやる

これがいい気分転換になるのだ

最近、よく専業主婦が屋根に上っている

どうやら日向ぼっこが流行っているらしい

素朴な疑問だが

どうしてみんな裸なのだろう

やはり開放感のせいだろうか?

屋根から落ちそうになっている主婦もちらほら

足をばたつかせる姿が実にユーモラスだ

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近所付き合い

あっもしもし奥さん

田中です

今、大丈夫?

なんかクチャクチャ言うてるけど

あっごめん

ご飯の途中やったんや

何食べてたの?

お好み焼き

そらよろしいわ

うちもよばれたいわ

いやいや、そんな事はええんです

ちょっとね

聞きたい事あるんやけどね

奥さん、うちの犬に眉毛描いた?

ああ、やっぱり

いやこの前もポチに眉毛描いてたでしょ

せやからまた奥さんがやらはったんやないかと思って

アハハやないで、アハハや

しかも八の字に描いたやろ

筆やから取れへんねん

白犬やからよう目立つわ

今も庭の窓からこっち見てるわ

ほんまに悲しそうな顔してるで

かわいそうにポチ落ち込んでしもて

散歩に連れ出そうとしても

踏ん張って動かへんねん

みんなに笑われるから恥ずかしいんやろうな

なんで人の犬に眉毛描くの?

面白いからって

あんたそれあかんで

書道の腕をそんなとこに使ったら罰当たるで

どないしてくれんの?

これ出るとこでたら結構な問題やで

えっ今からお好み焼き持っていくって?

ほんなら今回だけやで

今回はそれで目を瞑るわ

せやけど今度同じ事したら

あんたんとこの猫に眉毛描いたるからな

覚悟しいや

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父の決意

玄関で父が母と口論をしている

問題は父の格好についてだ

父はウサギの着ぐるみで出社すると言って譲らない

母は額に汗を浮かべ、必死にそれを阻止しようとしている

三十年間、無遅刻無欠勤の父が

なぜ突然着ぐるみ姿で会社へ行くのか?

それは正直分からない

だが父のことだ

何か狙いがあるのだろう

私はたった一人の父の娘だ

父のことは信用したいし

着ぐるみについても理解を示したい

ただ一つ気になるのは

着ぐるみの背中に貼られた

『打倒! 社長』の紙だ

書道三段の父が書いた達筆な筆文字

着ぐるみで出社することが

社長を倒すことになるのだろうか?

それともこんなイタい社員がいますよと

知られることが会社に対する痛手になるのか

本当のところは分からない

それは父が無事帰ってこられたら

聞いてみようと思う

ああ、とうとう母が説得を諦めた

泣き崩れる母を置いて

家を出て行く父

不覚にも格好いいと思ってしまった

着ぐるみなのに

着ぐるみなのに

ウサギ姿の

着ぐるみなのに……

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ヤリ逃げ

あれっ?

なんかおかしいぞ

うーわ、頭にヤリ刺さってるやん

グッサーいってるやん

あかん先が畳に突き刺さって取れへんぞ

これ完全に貫通してるなあ

綺麗に右から左へ突き抜けてるなあ

クッソー首痛いなあ

なんでや

なんでヤリ刺さってるねん

あっお前誰やねん

あまりの状況に気ぃつかなんだわ

なんで人の部屋で正座してるねん

なんやその格好は?

陸上の選手かい?

ヤリ投げ選手やと?

ほんならこれお前がやったんかい?

「すいません」やないがな

お前俺になんか恨みでもあんのかい?

むしゃくしゃしたから適当にヤリ投げたって

それはお前ダメですよ

ヤリ投げ選手失格ですよ

お前にヤリを投げる資格なんてないですよ

なんやねん

なにをそわそわしてるねん

朝練がありますって知らんがな

その前にする事があるやろ

「もういいじゃないですか」って

お前その態度はないで

完全に開きなおっとるやないか

何をふてくされてるねん

こら畳をむしるな

お前末っ子か一人っ子やろ?

おい、どこ行くねん

こら、ヤリ抜いてから朝錬行け!

あーあー、行ってしもたがな

逃げてもうたがな

これがほんまのヤリ逃げやな

クソー、上手い事言ったのに

誰も聞いてへんし

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部長の必殺技

ああ、今私のかわいい後輩が

私の美代ちゃんが

部長に呼ばれてしまった

恐らく、昨日のミスが原因なのだろう

取引先から苦情があったのは私も知っている

室内にいる人間はこれから何が起こるか知っているのだろう

みんな仕事をする振りをしながら

固唾を飲んで見守っている

ああ、やっぱりだ

部長のアイアンクロー炸裂だ

部長は片手でりんごを潰すほどの怪力の持ち主

私もやられた事があるので分かるが

かなり痛い

こめかみがメリメリと音を立てる

比喩ではなくて本当にメリメリ言うのだ

こういうときの部長はいつも嬉々としている

根っからアイアンクローをするのが好きなのだろう

ごめんね、美代ちゃん

たった二人の女子社員なのに

助けてあげられなくて

素朴な疑問だが

アイアンクローはセクハラではないだろうか?

いやどちらかというとパワハラか?

ちなみに私の名前は桑原である

以後、お見知りおきを

ああ、美代ちゃんが足をバタバタしている

おかわいそうに

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姦淫の女

いいかよく聞け

汝らのうち

罪なき者がまず

この女に石を投げるがよい!

ちょ、ちょっと待ちいな

言うてみただけやん

ほんまに投げると思ってないやん

うーわ、みんなめっちゃ投げてるやん

こいつらどんだけ自分見えてへんねん

日々のストレスが溜まっとるなあ

なんか生き生きしてんもんなあ

ちょっと待て!

みんな一旦、石を捨てろ

ほら見てみいな

女、血だらけやんか

コブだらけやんか

おいおい、なんやねんな

その目つきは

反抗的な目しやがって

自分で言うのもなんやけど

俺キリストやで

そこそこ有名やで

結構、偉いねんで

君らなあ

キリストにそんなことしたら罰当たるで

神様怒るで

イタッ

誰じゃ! 今、石投げたやつは

俺今しゃべってたやろ!

なんで石投げるかなあ

投げるんやったら

この女にやらんかい!

俺に投げてどうするんじゃ、ドアホ!

このスカタンどもが

イタッ! またやりやがったな

ほんまに言うてもわからんやっちゃのお

痛い! 痛い!

せやから痛いねんて

もうやめてえな

石なんか当たったら危ないやろ

もう前言撤回するからやめてえな

石なんが投げたらあかん

当たったら怪我してまうわ

みんな石を離そう

そして俺と話そう

石を持つから投げたなるねん

一回、地面に置こうや

あかん、誰も聞いてへんわ

みんな夢中やなあ

このままやったら死んでまうわ

逃げよ

ハァハァ、普段運動してへんから

ハァ、息が……ハァ切れるわ

せやけど、おかしいなあ

こんなはずやなかってんけどな

ハァ、予想外やわ

ハァ、ハァやっぱあれかな

関西弁があかんかったんかなあ

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練乳おじさん

おい、お前人の家で何してんねん

チュー、チュー音立てて

お前何を吸うてんねん

あっそれ俺の練乳やんけ

なんやねん

なんでお前、俺の練乳吸うねん

ほらここ見てみ

ちゃんと『お父さん』て書いてあるやろ

すいませんてなんやねん

謝るぐらいやったら最初からすなよ

何をぺこぺこ頭下げとんねん

大の大人が情けない

ええか?

お前がやってる事は犯罪やぞ

ほんでお前誰やねん

こんな時間に人んちの台所で

練乳吸うってどういう事やねん

“練乳おじさん”やと

知らんがな

そんなん言われても知らんがな

ご存知みたいな言い方すんな

ご存知みたいな言い方すんな

とりあえず警察に電話するからな

逃げるなよ

そこいとけよ

あっもしもし

夜中にすんませんな

不法侵入ですわ

なんかね

いきなり人ん家に入ってきて

練乳吸うとったんですわ

しかも、ちゃんとラベルのとこに

お父さんって書いてあるんですよ

考えられへんでしょ?

あっお父さんていうのは僕のことなんですけどね

とりあえず、ちょっと来てもらえますか?

あっすいません

ちょっと待って下さいよ

うーわ、あいつ逃げよったがな

しもたなあ

ちょっと目ぇ離した隙にこれやがな

なんや床に上に百円玉落ちとるがな

これあいつが置いていきよったんか

なんで百円やねん

足らへんっちゅうねん

百円で練乳が買えますか?

もう一回言うたるわ

このご時世、果たして百円で練乳が買えるんですか?

買える店あったら教えて欲しいわ

毎日そこに通うっちゅうねん

あいつ練乳おじさんとか言うといて

練乳の事、全く知らんやん

あいつ口だけやん

全然、練乳おじさんちゃうやんけ

ちょっとだけあいつに期待した俺自身にもがっかりやわ

なんかもうがっかりやわ

完全に名前負けや

返上せえ、返上

どっちか言うと俺の方が練乳おじさんやっちゅうねん

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午睡前

午後の授業は眠くて仕方が無い

腹が満たされると眠くなるのは人の常だ

俺のせいじゃない

第一、もっと面白い授業をやっていれば

眠気なんてふっとんでいるはずだ

サインもコサインもどうでもいい

俺はそんなものには興味が無い

タンジェントなんて論外だ

頼むからもっと俺の興味を引く授業をやってくれ

無駄な願いなのは、よく分かっている

ため息を一つ吐き

窓の向こうの運動場を見た

校長が教頭にコブラツイストをかけていた

笑顔の校長を見て

少しだけ高校生活が楽しくなりそうな予感がした

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猪木に贈る詩『出来心』

この詩をアントニオ猪木に捧げます。

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『出来心』

妻の顎が伸び続けている

最初は気のせいかと思ったのだがそうではないようだ

寝ている間に妻の顎を毎日計ってみると

数ミリずつだが確実に伸びているのがわかった

原因は明らかだ

この前アントニオ猪木の握手会に二人で出かけたのだが

奔放な妻は手を握りながら猪木の顎に触れてしまった

私は猪木がぼそっと呟いたのを聞き逃さなかった

「俺と同じようにしてやる」

確かに猪木はこう言ったのだ

これは猪木の呪いだ

あんなに美しかった妻が

猪木のようになるのは見てられない

こんな事なら握手会に行くんじゃなかった

猪木は器量が狭い

馬場さんならこんな呪いはかけないはずだ

今はとにかく猪木が憎い

私はあの顎男を決して許しはしないだろう

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