『永沢君』 さくらももこ
これまで『ちびまる子ちゃん』と『神のちから』と、さくらももこの漫画を二冊取り上げてきたが、今回は『永沢君』について書きたい。
ご存知『ちびまる子ちゃん』のスピンオフ漫画。
ちびまる子ちゃん内でも、いい味を出している永沢君の中学時代を描いたものなのだが、まあ妙な味わいのある漫画である。
アメトークで『中学校の時にイケていないグループに所属していた芸人』という企画をやっていたが、『永沢君』に出てくる藤木、小杉といったキャラクターは完全にイケてないグループに所属している。
イケてないグループがメインになっているわけだから、必然的に話が暗くなる。でもそれが毒々しくて面白いのだ。
さくらももこの暗黒面が遠慮なく発揮されている。
彼女はよく愚鈍な人間が嫌いと、いろいろな所で書いているが、倉田君という愚鈍を絵に描いたような男子が出てくる。永沢君に視力はいくつか尋ねられた倉田君は
「視力ってなんだっけ?」
とすばらしい返し方をするのだ。
花輪君もたまに出てくるのだが、彼は完全にイケているグループ(といっても花輪君は派閥を嫌う性格なので、取り巻きの女子といる事が多い)に所属している。
最初に永沢君を読んだ時、僕はまだ十代だった。『ちびまる子ちゃん』のような健全さを求めていたので「なんだこの漫画は……」と、顔に縦線を入れまくりながら、かなり戸惑った覚えがある。
しかし、今になって読んでみると、実に面白い。
ただ苦いものでしかなかったビールを、いつの間にか美味しく感じるようになっているのに似ているかもしれない。
一番好きなのが『ラジオ』の回だ。
実はハガキ職人の藤木(ペンネームはキジフ・ゲルーシ)に、永沢君が対抗心を燃やして、ラジオにネタハガキを送る。
どんな内容かというと
“うんこを利用しよう”というコーナーへの投稿で
①うんこを乾燥させて乾燥イモのかわりに食べる
②うんこを絵の具にして絵を描く
といった感じだ。
ちなみに永沢君のペンネームは、キンタマネギ男である。
しかし、残念ながらこのハガキ、ラジオ局に届かず、宛名違いで自宅に戻ってくる。
それを読んだ母親が
「うんこだかなんだか知らないけど、夜中に遅くまでこんなものを書いていたのかい」
と情けない顔になり
「……さんざん育てて、キンタマネギ男かい……」
と、ついには涙を流してしまう。
そういえば、僕が中二の頃、友人に年賀状を出したのだが、その時に
「あけまして、おめ○!」
と、物凄いバカな絵を描いて送りつけたら、住所が間違っていて家に戻ってきてしまい、母親にそれを見られ赤面した記憶がある。
しかし、今考えると、戻ってこなくても相手の親に、年賀状の内容を見られる可能性が高いわけで、どちらにせよ恥ずかしい行いだったと言わざるをえない。
まあ中学生男子なんて、こんなものである。
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